【1月17日 AFP】2011年3月の民衆蜂起をきっかけに内戦状態となっているシリアで、レイプが戦争の武器として「大きな影響力」を及ぼし、女性や子どもが近隣諸国に難民となって流出する「最大の理由」になっているとの報告書が今週、発表された。

 米国を拠点とする難民支援団体「国際救援委員会(International Rescue CommitteeIRC)」が14日に発表した報告書「シリア:地域的な危機(Syria: A Regional Crisis)」は、レイプが「シリアの内戦において重大かつ憂慮すべき特徴」になっていると指摘。「レバノンとヨルダンでIRCが実施した3回の評価の結果、難民たちが家族でシリアを脱出した第1の理由はレイプだった」として、緊急の対応が必要だと呼び掛けた。

 報告書によると「多くの女性や少女たちが、公共の場所や自宅で襲われたことを口々に語った。相手は主に武装した男たちで、ときには集団で、またしばしば家族たちの前でレイプが行われていた」という。女性や少女が誘拐されてレイプされたうえ、拷問されて殺害される事例も複数報告されたという。

■「家族に殺される」、恐れる被害者たち

 シリアの人々は性的暴力を受けても沈黙しがちだ。IRCによると、レイプ被害に遭ったことを烙印(らくいん)とみなし、被害者の女性や少女、その家族にとって不名誉だとする社会的慣習が背景にある。

 IRCの聞き取り調査を受けた人の多くは、襲撃者からの報復や、レイプを「恥」だと思う家族に殺されることを恐れていた。少女らの場合はさらに「名誉を守るため」に低年齢で結婚を強要されることにもおびえていた。

 IRCによれば、こうしたシリア難民たちは逃げた先の難民キャンプでも、医療支援とカウンセリングの不足に加え「安全でない環境や、家庭内暴力の激化」に直面しているという。

 国連難民高等弁務官事務所(UN High Commissioner for RefugeesUNHCR)の11日の発表によれば、近隣諸国と北アフリカに逃れたシリア難民の数は、登録されているだけで60万人を超えた。シリアの内戦状態が続けば、難民数は110万人にまで膨れあがると国連は予測している。(c)AFP