【12月25日 AFP】シリアに住むサミール・クタニ(Samir Qutaini)君(17)は、成績が良かったことは一度もなかったため、学校を中退した。プロのサッカー選手になることを夢見ていたものの、結局は父親が営む携帯電話店で働くことになった。サミール君の人生は、先の見えない未来に向かって暗中模索するその他大勢の17歳とさほど変わらない。唯一の大きな違いは、サミール君が携帯電話を捨て、反体制派の戦闘員になるためにAK-47アサルトライフルを手にしたことだ。

「学校生活で懐かしく思い出すのは、友達とサッカーをしたことくらい。僕はセンターフォワード。ゴールを決められるからね」。サミール君の夢は、スペイン1部リーグ、FCバルセロナ(FC Barcelona)のスター選手、リオネル・メッシ(Lionel Messi)やアンドレス・イニエスタ(Andres Iniesta)とプレーすることだった。

 少年の夢想は、近くで起きた爆発に遮られた。サミール君は銃を置き、小さなストーブで手を温める。今の自宅は、数か月続く砲撃や戦闘で荒廃した北部アレッポ(Aleppo)市内のサラヘディン(Salaheddin)地区にある、見捨てられた食料雑貨店だ。ここに潜伏する反体制派「自由シリア軍(Free Syrian ArmyFSA)」の戦闘員と、その掃討に奮闘するバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権の兵士を除けば、同地区は無人の土地だ。

 東部イドリブ(Idlib)市に住む本当の家族のもとを数か月前に去って以来、サミール君が家族のように行動を共にしてきたのは、同じ10代が集まった少年グループだ。少年たちの心は全ての兵士の心がそうであるように、故郷に残してきたものの記憶や、戦闘の本質についての考え、生と死の激しいコントラストに満ちている。

 幼さが残る顔にスカーフを巻いた、グループ最年少のアブデル・ハデル・ゼイダン(Abdel Khader Zeidan)君(15)は、車の運転を法律で認められる年齢に達していないものの、「僕を年齢で判断しないでほしい。もう5か月も戦っているし、兵士を何人も殺した」と語る。通っていた学校は、2011年3月から4万4000人余りが死亡したとされる政府軍と反体制派との戦いの影響で閉鎖された。

「毎日テレビで罪のない人々が政府軍に殺されている様子を見ていたら、自分たちも殺されるのを家で待っていられなくなった。自分も戦おうと決めた日、両親が泣き始めたのを覚えている。家族には毎週会って自分は無事だと伝えているけど、母さんは別れ際にいつも泣くんだ」

 そばに座っている16歳のモハメド・オボリ(Mohammed Obori)君は、もぬけの空となった家で見つけたおもちゃの戦車で遊んでいる。電池はとうの昔に切れたままだ。「これは僕の幸運のお守り。どこにでも持っていって、退屈な時に遊ぶ」。父親は自宅があるイドリブ県で、既にFSAの戦闘員として活動していた。「戦闘員に志願して戦うよう勧めてくれたのは父さんだった」

 モハメド君は家族について考えたり、語ったりしないようにしている。その方が「戦闘に頭を集中できるから」だ。これまでに兵士5人を殺害したというモハメド君だが、自宅の暖かいベッドや、毎日のように食べているチキンやケバブ以外の料理が時々恋しくなるという。

■戦いはまるでテレビゲーム、だが「やり直し」はできない

 グループ最年長で、最も経験豊富なマハムート・バサル(Mahmut Bassar)君(18)は、戦闘について多くを語ろうとしない。「誰かを殺したかどうかなんて分からない。そんなことはどうでもいい」とマハムート君。「やつらに向かって撃ったら、撃ち返されたことだけは分かっている。アラーは銃弾を導いてくれる」。「志願する前、銃に触ったことは一度もなかったし、そんなこと考えもしなかった」

 過去に政府支持派の民兵に拘束され、意識を失うまで暴行され所持品を全て奪われたとも語るマハムート君だが、良心が全て失われたわけではない。戦いが終われば復学し、将来は大学で薬学や看護など「社会に役立つこと」を学びたいという。

 今は戦闘参加に両親が反対している事実と折り合いをつけている。「両親が反対するのは当然のこと。僕は長男なので、殺されてほしくないんだ。でも、2人とも口には出さないけど、両親、特に僕と同じ年齢で蜂起に参加した父さんは、僕を誇りに思っている」。父親は1980年代に起きた現大統領の父親ハフェズ・アサド(Hafez al-Assad)前大統領に対する蜂起に参加したという。

 その後、ライフルをいつでも撃てるよう構えた少年戦闘員たちが記者と共に道路を歩いていた時、サミール君は戦闘についてこう語った。「そんなに悪いものじゃない。人は死んだりするけど、結局テレビゲームみたいなもの」。サミール君はシューティングゲーム「コール・オブ・デューティ(Call of Duty)」シリーズの熱烈なファンだ。「僕は(ゲームが)本当にうまいんだ。特に狙撃モードがね」

 ここでは10代の少年の空想が、現実の近代的な戦闘に姿を変えている。サミール君は、自分は実際に狙撃担当だと言う。拠点に戻ってからテレスコープ付きの銃を見せてくれたものの、主張が事実かどうかは分からなかった。

 しかし4人の中で最も分別のあるマハムート君は、テレビゲーム的な空想を全く持っていない。「(現実に)やり直しのチャンスはない。人生は一度だけだ」(c)AFP