中東激怒の反イスラム映画、関係者に迫る危険 俳優らは「だまされた」
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【9月20日 AFP】イスラム世界で激しい反発を巻き起こしている米映画『イノセンス・オブ・ムスリム(Innocence of Muslims)』の製作者、ナコウラ・バッセリー・ナコウラ(Nakoula Basseley Nakoula)氏(55)の家族が17日、潜伏している同氏に合流した。一方、同映画の俳優たちは次々に「だまされて出演した」と声を上げている。
ナコウラ氏はエジプト系米国人でキリスト教の一派のコプト教徒。2010年6月に銀行口座開設に絡むなりすまし犯罪で禁錮21月を言い渡され、現在も保護観察下にあるが、15日に監察官の聴取を受けて以降、映画の影響による危険を恐れて姿を見せていない。
そうした中の17日未明、ナコウラ氏の家族4人もロサンゼルス郡保安官事務所の護衛の下、ロサンゼルス(Los Angeles)郊外のセリトス(Cerritos)の自宅から顔を隠して覆面警察車両に乗りこみ、ナコウラ氏の潜伏先に向かった。
地元ウェブサイト「パッチ(Patch)」のセリトス版によると、4人はナコウラ氏の妻と2人の息子、そして娘だったという。
■激怒するイスラム社会
イスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を暴力的な好色漢として描写したこの映画の製作関係者に対しては、中東から多くの脅しが届き、出演者たちも身の危険に直面している。
レバノンではイスラム教シーア(Shiite)派組織ヒズボラ(Hezbollah)の指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師が「これ以上にないイスラムへの侮辱」だと非難し、「米国と全世界」に「危険な反動」を警告した。エジプトではさらにサラフィストの指導者が、映画の全関係者に死をと呼び掛ける宗教令を発した。
リビアでは米大使館が襲撃される事件が起き、大使以下4人が死亡。抗議は中東から北アフリカやアジアにも広がっている。
■俳優たちは「だまされた」
自分たちへの矛先をかわそうと、17日には新たに2人の米国人出演者が映画の制作過程について声を上げた。俳優らによると、反イスラム的な意図は撮影中、キャストやスタッフには隠されていたという。
米CNNテレビの取材に応じたリリー・ディオンヌ(Lily Dionne)さんは、案内広告サイトのクレイグスリスト(Craigslist)に掲載されたキャスト募集を見て、企画に参加したと語る。もともとは「砂漠の戦士(Desert Warrior)」と題された映画の企画で、主人公はジョージ(George)という名だったと言う。
俳優を目指してハリウッド(Hollywood)に来たばかりだったディオンヌさんには、ナコウラ氏がプロジェクトを完全に管理しているように見えたという。ときにはナコウラ氏が監督と言い争うこともあった。「(実は、ナコウラ氏には)ビジョンがあった。ある形を与えようとしていた。彼は自分のしていることが分かっていた。彼は期間中ずっと、私たちを手玉にとっていたのです」
脚本について、ディオンヌさんはこう語る。「私たちもいったい何の話なのか不思議だった。彼らは『ジョージ』と言い続ける。でも、これは2000年前の中東の話のはず。ならば『ジョージ』っていったい誰?」
その後、映画の編集段階に入ると、ディオンヌさんら出演者は録音のために呼ばれた。そこで「例えばムハンマドという特定の単語」を録音したという。「単語は1個ずつ(録音された)。文章じゃなかった」
もう1人の女優、アンナ・グルジ(Anna Gurji)さんは昨年、脇役のオーディションを受けて企画に参加した。「砂漠に彗星が落ち、それをめぐり太古の部族が争うという内容の低予算インディーズ長編映画」のはずだった。「その1年後、映画は(俳優の許可なく)吹き替えされた。台本は劇的に変えられて、映画は反イスラム映画に変身したのです」
「登場人物の名前さえも変えられた。そして私が共演した『ジョージ』は、『ムハンマド』に変わった」とグルジさんは、英国の作家ニール・ゲイマン(Neil Gaiman)氏に宛てた手紙で述べた。ゲイマン氏はこの手紙を、自分のブログに掲載している。(c)AFP
ナコウラ氏はエジプト系米国人でキリスト教の一派のコプト教徒。2010年6月に銀行口座開設に絡むなりすまし犯罪で禁錮21月を言い渡され、現在も保護観察下にあるが、15日に監察官の聴取を受けて以降、映画の影響による危険を恐れて姿を見せていない。
そうした中の17日未明、ナコウラ氏の家族4人もロサンゼルス郡保安官事務所の護衛の下、ロサンゼルス(Los Angeles)郊外のセリトス(Cerritos)の自宅から顔を隠して覆面警察車両に乗りこみ、ナコウラ氏の潜伏先に向かった。
地元ウェブサイト「パッチ(Patch)」のセリトス版によると、4人はナコウラ氏の妻と2人の息子、そして娘だったという。
■激怒するイスラム社会
イスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を暴力的な好色漢として描写したこの映画の製作関係者に対しては、中東から多くの脅しが届き、出演者たちも身の危険に直面している。
レバノンではイスラム教シーア(Shiite)派組織ヒズボラ(Hezbollah)の指導者ハッサン・ナスララ(Hassan Nasrallah)師が「これ以上にないイスラムへの侮辱」だと非難し、「米国と全世界」に「危険な反動」を警告した。エジプトではさらにサラフィストの指導者が、映画の全関係者に死をと呼び掛ける宗教令を発した。
リビアでは米大使館が襲撃される事件が起き、大使以下4人が死亡。抗議は中東から北アフリカやアジアにも広がっている。
■俳優たちは「だまされた」
自分たちへの矛先をかわそうと、17日には新たに2人の米国人出演者が映画の制作過程について声を上げた。俳優らによると、反イスラム的な意図は撮影中、キャストやスタッフには隠されていたという。
米CNNテレビの取材に応じたリリー・ディオンヌ(Lily Dionne)さんは、案内広告サイトのクレイグスリスト(Craigslist)に掲載されたキャスト募集を見て、企画に参加したと語る。もともとは「砂漠の戦士(Desert Warrior)」と題された映画の企画で、主人公はジョージ(George)という名だったと言う。
俳優を目指してハリウッド(Hollywood)に来たばかりだったディオンヌさんには、ナコウラ氏がプロジェクトを完全に管理しているように見えたという。ときにはナコウラ氏が監督と言い争うこともあった。「(実は、ナコウラ氏には)ビジョンがあった。ある形を与えようとしていた。彼は自分のしていることが分かっていた。彼は期間中ずっと、私たちを手玉にとっていたのです」
脚本について、ディオンヌさんはこう語る。「私たちもいったい何の話なのか不思議だった。彼らは『ジョージ』と言い続ける。でも、これは2000年前の中東の話のはず。ならば『ジョージ』っていったい誰?」
その後、映画の編集段階に入ると、ディオンヌさんら出演者は録音のために呼ばれた。そこで「例えばムハンマドという特定の単語」を録音したという。「単語は1個ずつ(録音された)。文章じゃなかった」
もう1人の女優、アンナ・グルジ(Anna Gurji)さんは昨年、脇役のオーディションを受けて企画に参加した。「砂漠に彗星が落ち、それをめぐり太古の部族が争うという内容の低予算インディーズ長編映画」のはずだった。「その1年後、映画は(俳優の許可なく)吹き替えされた。台本は劇的に変えられて、映画は反イスラム映画に変身したのです」
「登場人物の名前さえも変えられた。そして私が共演した『ジョージ』は、『ムハンマド』に変わった」とグルジさんは、英国の作家ニール・ゲイマン(Neil Gaiman)氏に宛てた手紙で述べた。ゲイマン氏はこの手紙を、自分のブログに掲載している。(c)AFP