シリアで活動するフリーランス記者、取材は危険と隣り合わせ
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【8月6日 AFP】シリア当局はメディアに対し、反体制派の蜂起で多数の死者が出ている国内情勢について自由な取材を認めない方針を示しているが、これを契機に、危険を冒して取材にあたるフリーランス記者の仕事が注目を集めている。
■正規入国では伝えられないもの
スペイン人フリー記者のマイテ・カラスコ(Mayte Carrasco)氏は「私たちが手がけているのは、絶滅が危惧されている戦争報道という仕事だ」と語る。
カラスコさんはシリアに潜入し、政権側がこの17カ月近くの間、抑え込もうとしてきた反体制派の声を世界に伝えてきたプロの報道カメラマンや記者、ビデオジャーナリスト数十人の1人だ。
シリア当局から正式にビザの発給を受けた場合は政府の情報「案内人」が常時同行し、自由な取材活動が制限されることになるため、独自の行動をとろうとする記者たちは、反体制派が優勢な北部からの不法入国を余儀なくされた。
こうした記者たちは自分の仕事に熱意と確信を持っているものの、いらだちは付き物であり、自分を守ってくれるのは運だけだろうという厳しい状況に気付いて恐怖にとらわれることも珍しくない。
■守ってくれるのは運のみ、厳しい取材条件
中東での紛争の報道に長年携わっているアルゼンチン人記者カレン・マロン(Karen Maron)さんは「フリー記者は自ら代償を払うことを常に念頭に置く必要がある。医療保険はなく、大手メディアに派遣されているわけでもない。フリー記者はたった一人で活動しているが、それが自分の選んだ道なのだ」と語る。
イタリア人フォトジャーナリストのジュリオ・ピスチテッリ(Giulio Piscitelli)氏のようなフリー記者は、現在のシリア情勢のような紛争をキャリア向上の機会と捉えている。ピスチテッリ氏は昨年、反体制派の蜂起に続く内戦に西側諸国が軍事介入し、最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の独裁体制が崩壊した末、同大佐も死亡したリビアについて「昨年は現地に行けなかった」と残念そうに語った。戦争報道は初めてという同氏は「ここ(シリア)が自分にとってキャリア向上の足がかりになってくれることを願っている」と述べ、「大手通信社は派遣できる取材チームの数が足りないので、自分が取材した成果を売り込む余地がある」と付け加えた。
ただし、スペイン人ビデオ記者のロベルト・フライレ(Roberto Fraile)氏は「(大手メディアに)利用されている感覚がまだある」と指摘する。カラスコ氏も「自分たちは全く隙だらけ。多くのフリーランス記者は防具やヘルメットさえ持っておらず、衛星電話を持っている者もほとんどいない。大抵は資金も乏しい」と同意した。
スペイン人カメラマン、アルベルト・プリエト(Alberto Prieto)氏も「写真を送っているメディアから自分が大切に扱われているとは思わない。Eメールに返信のない時や、僕が撮った写真の掲載を拒むことだってある。写真を採用するときでも安い値段で買い取る」と不満を述べる。
■金や名声ではない、「報道」という情熱
しかし多くの困難があっても、ピスチテッリ氏がひるむことはない。「この仕事を愛しているし、自分たちがやっていることは非常に重要だと思うからだ」
マロン氏にとって、フリーランスとは浮き沈みのあることに他ならない。「生活していくのが大変な時もある。フリーランスは素晴らしい仕事をすれば、その仕事のクオリティを認めてもらえる。そうかと思えば何の説明も配慮もなく、切り捨てられることもある」。さらに「自分の報道が成功を収めても、その報道に関する権利が認められるといった契約書は存在しない」
それでも英国人ビデオ記者のジョン・ロバーツ(John Roberts)氏は、自らの意思でフリーランスとしての人生を選択したと明言する。「もちろん私だって暮らしていかねばならないし、誰もがそうであるように同業者や同僚からの評価はありがたい。けれどそういったこと以上に、これは私が選び取った職業であり、ライフスタイルなんだ」
命懸けでシリアの取材を続けているフリーランスたちは、そのキャリアの長短にかかわらず全員、自分たちが最終的に富や名声を得ることはないと分かっている。
ピスチテッリ氏はこう信念を述べる。「自分がやっている仕事で金持ちになったり、有名になったりするとは思っていない。どうにか暮らしていきながら、良質の報道をしたいだけだ」
ベテランのスペイン人ビデオジャーナリスト、リカルド・ガルシア・ビラノバ(Ricardo Garcia Vilanova)氏も同じ思いだ。「こういった種類の仕事で金を儲けたり、名声を得たり、有名になる人間は誰もいない。悪い結末になるかもしれないが、それでもこの仕事は私たちの情熱なんだ」(c)AFP/Antonio Pampliega
■正規入国では伝えられないもの
スペイン人フリー記者のマイテ・カラスコ(Mayte Carrasco)氏は「私たちが手がけているのは、絶滅が危惧されている戦争報道という仕事だ」と語る。
カラスコさんはシリアに潜入し、政権側がこの17カ月近くの間、抑え込もうとしてきた反体制派の声を世界に伝えてきたプロの報道カメラマンや記者、ビデオジャーナリスト数十人の1人だ。
シリア当局から正式にビザの発給を受けた場合は政府の情報「案内人」が常時同行し、自由な取材活動が制限されることになるため、独自の行動をとろうとする記者たちは、反体制派が優勢な北部からの不法入国を余儀なくされた。
こうした記者たちは自分の仕事に熱意と確信を持っているものの、いらだちは付き物であり、自分を守ってくれるのは運だけだろうという厳しい状況に気付いて恐怖にとらわれることも珍しくない。
■守ってくれるのは運のみ、厳しい取材条件
中東での紛争の報道に長年携わっているアルゼンチン人記者カレン・マロン(Karen Maron)さんは「フリー記者は自ら代償を払うことを常に念頭に置く必要がある。医療保険はなく、大手メディアに派遣されているわけでもない。フリー記者はたった一人で活動しているが、それが自分の選んだ道なのだ」と語る。
イタリア人フォトジャーナリストのジュリオ・ピスチテッリ(Giulio Piscitelli)氏のようなフリー記者は、現在のシリア情勢のような紛争をキャリア向上の機会と捉えている。ピスチテッリ氏は昨年、反体制派の蜂起に続く内戦に西側諸国が軍事介入し、最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の独裁体制が崩壊した末、同大佐も死亡したリビアについて「昨年は現地に行けなかった」と残念そうに語った。戦争報道は初めてという同氏は「ここ(シリア)が自分にとってキャリア向上の足がかりになってくれることを願っている」と述べ、「大手通信社は派遣できる取材チームの数が足りないので、自分が取材した成果を売り込む余地がある」と付け加えた。
ただし、スペイン人ビデオ記者のロベルト・フライレ(Roberto Fraile)氏は「(大手メディアに)利用されている感覚がまだある」と指摘する。カラスコ氏も「自分たちは全く隙だらけ。多くのフリーランス記者は防具やヘルメットさえ持っておらず、衛星電話を持っている者もほとんどいない。大抵は資金も乏しい」と同意した。
スペイン人カメラマン、アルベルト・プリエト(Alberto Prieto)氏も「写真を送っているメディアから自分が大切に扱われているとは思わない。Eメールに返信のない時や、僕が撮った写真の掲載を拒むことだってある。写真を採用するときでも安い値段で買い取る」と不満を述べる。
■金や名声ではない、「報道」という情熱
しかし多くの困難があっても、ピスチテッリ氏がひるむことはない。「この仕事を愛しているし、自分たちがやっていることは非常に重要だと思うからだ」
マロン氏にとって、フリーランスとは浮き沈みのあることに他ならない。「生活していくのが大変な時もある。フリーランスは素晴らしい仕事をすれば、その仕事のクオリティを認めてもらえる。そうかと思えば何の説明も配慮もなく、切り捨てられることもある」。さらに「自分の報道が成功を収めても、その報道に関する権利が認められるといった契約書は存在しない」
それでも英国人ビデオ記者のジョン・ロバーツ(John Roberts)氏は、自らの意思でフリーランスとしての人生を選択したと明言する。「もちろん私だって暮らしていかねばならないし、誰もがそうであるように同業者や同僚からの評価はありがたい。けれどそういったこと以上に、これは私が選び取った職業であり、ライフスタイルなんだ」
命懸けでシリアの取材を続けているフリーランスたちは、そのキャリアの長短にかかわらず全員、自分たちが最終的に富や名声を得ることはないと分かっている。
ピスチテッリ氏はこう信念を述べる。「自分がやっている仕事で金持ちになったり、有名になったりするとは思っていない。どうにか暮らしていきながら、良質の報道をしたいだけだ」
ベテランのスペイン人ビデオジャーナリスト、リカルド・ガルシア・ビラノバ(Ricardo Garcia Vilanova)氏も同じ思いだ。「こういった種類の仕事で金を儲けたり、名声を得たり、有名になる人間は誰もいない。悪い結末になるかもしれないが、それでもこの仕事は私たちの情熱なんだ」(c)AFP/Antonio Pampliega