【7月27日 AFP】シリアは数十年前から化学兵器を保有し、その規模は中東有数だとされている。しかしその実態については専門家の間で意見が分かれている。

 シリアは化学兵器禁止条約(Chemical Weapons ConventionCWC)に署名していない数少ない国のひとつで、保有状況に関する公開された情報は乏しい。

 シリア政府は、化学兵器および生物兵器の戦時使用を禁止したジュネーブ議定書(Geneva Protocol)には署名しているが、同議定書はそうした兵器の生産や保管、移動に関しては規定していない。

 化学兵器禁止条約に基づき設立された国際機関である化学兵器禁止機関(Organisation for the Prohibition of Chemical WeaponsOPCW)のマイケル・ルーハン(Michael Luhan)報道官は「我々はシリアに関する情報を注意深く追っているが、現地に査察官を派遣しなければこれ以上のことは言えない」とAFPの取材に語った。

 仏パリ(Paris)のシンクタンク、戦略研究所(Foundation for Strategic Research)のオリビエ・ルピック(Olivier Lepick)氏は「シリアの化学兵器は壮観だ。化学兵器の中でも最先端で最も効率が良く、最も毒性の高い有機リン化合物の合成にも習熟している」と解説する。この種の化合物には二酸化硫黄とエチレンを反応させるとできるマスタードガスや、サリンやVXなどの神経ガスが含まれる。

■エジプト、旧ソ連、ロシア、イランが支援

 米国の独立機関、核脅威イニシアティブ(Nuclear Threat InitiativeNTI)によると、1970年代に始まったシリアの化学兵器プログラムは、当初はエジプト、次いで旧ソ連の支援を受けた。1990年代に入ると支援はロシアが引き継ぎ、遅くとも2005年にはイランも支援を始めた。同機関によれば、プログラムを運営しているのはシリア政府の科学研究評議会とみられる。

 米議会調査局(Congressional Research Service)は、入手可能な情報から神経ガスとマスタードガスの生産と保管は、アレッポ(Aleppo)南東のサフィラ(Al-Safira)、ダマスカス(Damascus)、ハマ(Hama)、ホムス(Homs)、ラタキア(Latakia)といった都市とその周辺への集中が示唆されていると指摘している。

 公表されている情報によれば、化学兵器の運搬手段としては航空爆弾や砲弾に加え、スカッド(Scud)ミサイルの発射システムがある。しかし核脅威イニシアティブは、シリアの化学兵器のセキュリティーについてなんらかの結論を引き出すには、公開されている情報では不十分だとしている。(c)AFP