【7月10日 AFP】虐殺を食い止めるため内戦状態のシリアを再訪した国連(UN)とアラブ連盟(Arab League)のシリア問題特使、コフィ・アナン(Kofi Annan)前国連事務総長は9日、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領と会談し、1年4か月に及ぶ反体制派との紛争終結に向けた「新たな政治的取り組み」で合意したと述べた。

 シリアではこれまでに政権側と反体制側との衝突で1万7000人以上が死亡したとされる。

 首都ダマスカス(Damascus)で会談後、アナン特使は「暴力停止の必要性と、そのための方法や手段を協議した」と述べ、アサド大統領と合意した「取り組み」を反体制側の武装勢力にも提案する考えを示した。アナン特使のシリア訪問は今回が3度目。

 一方、政権寄りのシリア紙アルワタン(Al-Watan)は、協議の焦点は6月末にスイスのジュネーブ(Geneva)で開かれたシリア関係国会議の合意内容だったと報じている。同紙によると、会談では関係国会議が合意した挙国一致内閣の樹立に向けた政権移行手段が話し合われたが、アサド大統領の退任には触れなかったという。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)常任理事国やトルコ、カタールなどが関係国会議で合意したシリアの政権移行計画にアサド大統領の退任要求は明示されていないが、欧米諸国と反体制派は、移行後の挙国一致内閣において同大統領の役職はないと言明している。

 アナン特使とアサド大統領の会談が行われた9日もシリア国内では衝突が続き、シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によれば少なくとも58人が死亡した。前日にも100人近くが死亡している。(c)AFP