【6月12日 AFP】シリアで11日、政府側のヘリコプターが反体制派の拠点に攻撃を加え、90人近くが死亡した。米国はシリア政府が新たな虐殺を計画しているのではないかとの懸念を示した。

 シリア政府の武装ヘリコプターは同日、トルコに近い人口3万人の町アル・ヘファ(Al-Heffa)や、同国中部のラスタン(Rastan)で反体制派の拠点を機銃掃射した。

 インターネット電話スカイプ(Skype)でAFPの取材に応じた女性活動家は、「アル・ヘファの周縁部に複数の戦車がいる。戦車がこれほど近くまで来たことは過去に例がない。町で負傷者を手当てしている医師は1人しかいない。大半の住民は町から逃げた」と語り、泣き崩れた。

 シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は、11日にシリア全土で少なくとも87人が死亡し、反体制行動が始まった2011年3月以降の死者は1万4100人以上になったと発表した。

 このような情報を受け、米国務省のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)報道官は、「シリア政府が新たな虐殺を計画している可能性があるというシリア国内からの報告に接し、米政府は、コフィ・アナン(Kofi Annan)特使に続いて深い懸念を表明する」と述べた。

 またヌーランド報道官はヘリコプターから自国民を機銃掃射するといった動きは、40年にわたる支配の中で最も深刻な脅威に直面しているアサド政権がますます自暴自棄の度を強めていることを示していると指摘したが、シリアに軍事介入しないという従来からの米国の方針をあらためて示した。

 一方トルコの半国営アナトリア(Anatolia)通信によると、シリア国外で活動している反体制派組織、シリア国民評議会(Syrian National CouncilSNC)の新しい指導者に選ばれたアブデルバセト・サイダ(Abdel Basset Sayda)議長は、大統領が副大統領に権力を譲って退陣したイエメンの例に倣い、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領が副大統領に権力を移譲することを要求した。(c)AFP