【4月23日 AFP】18日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)が掲載した写真で、アフガニスタン駐留米兵が旧支配勢力タリバン(Taliban)戦闘員の遺体とともにポーズをとって撮影していたことが明るみに出され、物議を醸している。

 専門家らによれば、兵士が「戦利品」としてその成果を写真撮影することは今に始まったことではない。今回の事件で新しい現象と言えるのは、テクノロジーの発達で戦地で写されたデジタル画像が瞬時に広まった点だと、彼らは指摘する。

■デジタル技術で公の目に触れる戦場

 バラバラになったタリバン兵の遺体の手脚を持って撮影した米軍兵らの写真は、戦争の残虐な側面を暴くものだ。一般市民にとっては非常に衝撃的だが、戦闘員たちにとっては珍しくもない光景だ。

「(こうした)スナップ写真は、ボーア戦争(19世紀末)の時代からある」と美術キュレーターのアン・ウィルクス・タッカー(Anne Wilkes Tucker)氏は述べる。

 タッカー氏は米テキサス(Texas)州のヒューストン美術館(Museum of Fine Arts, Houston)で11月に開催される写真展「War/Photography: Images of Armed Conflict and Its Aftermath(戦争と写真撮影:武力紛争の画像とその影響)」の監修者だ。これまで8年をかけて過去165年分の戦争写真を調査、厳選してきた。

「第1次と第2次世界大戦中にドイツ人兵士たちが撮影したスナップ写真のアルバムには、処刑の場面を撮影したものがあった。兵士たちが持ち帰って母親に見せるような類の写真だったと思う」(タッカー氏)

 しかし当時の写真は現像やプリントに時間がかかり、こうした写真を目にするのは通常、少数の内輪の人たちだけだった。他人の目には長年触れることがないか、あるいは全く目にする機会がなかった。

 それが今日では、携帯電話やポケットサイズのデジタルカメラで気楽に写真を撮影し、同僚の兵士や家族にメールで送ることができる。そうした写真が意図せずして公の場に出てしまうこともある。「配信技術の進化が、このような変化をもたらした」とタッカー氏は分析する。

「兵士たちのほとんどがなんらかのインターネットアクセス手段を持っており、戦場で撮影した、彼らにとって「とっておき」の写真を瞬時にダウンロードすることが可能だ」と指摘するのは、民間の米軍史保存団体「Army Historical Foundation」の主任歴史研究員、マシュー・シーリンガー(Matthew Seelinger)氏だ。

■戦場の残虐な光景、兵士には日常

 米ホワイトハウスと北大西洋条約機構(NATO)は18日、そろってロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されたスナップ写真を非難した。

 その一方で、NATOのアナス・フォー・ラスムセン(Anders Fogh Rasmussen)事務総長は「単発的な出来事だ」と発言した。だが今回の写真の件で、アフガニスタン人戦闘員の遺体に放尿する米海兵隊員たちの動画がインターネット上で公表された1月の出来事を再び思い起こさずにはいられない。

 イスラエル軍兵士が前線で直面する問題への社会的認識を高めることを目的とする元兵士らによる団体「ブレーキング・ザ・サイレンス(Breaking the Silence)」の共同設立者、ヤフダ・ショール(Yehuda Shaul)氏は、「誰もが日常生活を写真に撮るように、私たち(兵士)も自分たちの日常を写真に撮っている」と、AFPの電話インタビューでイスラエルから語った。

「登山家がエベレストの頂上に到達すれば、写真を撮るだろう。戦闘兵としての訓練とは敵を殺す訓練だ。その任務を達成した時に『みやげ』を持ち帰るのは自然なことだ」(ショール氏)
 
 ショール氏はそうした行為を容認しているわけではない。だが、戦場に兵士たちを送っておきながら、彼らなりの現実を表現した私的なものが問題を引き起こした時に個々の兵士を責めるのは、社会の「偽善」だと主張する。

 キュレーターのタッカー氏も、写真が撮影された瞬間が「その時、兵士たちが生きている人生なのだ」と指摘する。「こうした写真を目にする時、彼らを戦場に送ったのは私たちであり、その彼らがそうした行為をしているということを、私たちも自覚しなければならない」(c)AFP/Robert MacPherson

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