【12月22日 AFP】(一部更新)駐留米軍が完全撤退してまもないイラクの首都バグダッド(Baghdad)で22日、朝のラッシュアワーを中心に10件以上の爆発が相次ぎ、60人が死亡した。

 イラク保健省のジアド・タリク(Ziad Tariq)報道官はバグダッドで計60人が死亡、183人が負傷したと発表した。

 バグダッド治安当局の報道官、カシム・アタ(Qassim Atta)少将はAFPの取材に対し、「重要施設や治安部隊は狙われなかった。標的にされたのは子どもの学校や、日雇いの労働者たち、汚職摘発機関などだ」と語り、爆発は市内全域で起きているが、何者による犯行かを語るのは時期尚早だと述べた。

 汚職摘発機関の事務所は、自爆犯1人が運転する爆発物を積んだ車で攻撃され、上級捜査官5人を含む23人が死亡した。この他に道路やカフェ、市場でも爆発があった。

 これに先立ち、バグダッドの北、ディヤラ(Diyala)州の州都バクバ(Baquba)郊外で同日早朝、両親と娘2人、息子1人の一家5人が射殺される事件が起きた。

 この一家の父親と息子は、イスラム教スンニ派の部族による反アルカイダ(Al-Qaeda)の治安組織「覚醒評議会(Awakening、サフワ、Sahwa)」のメンバーだった。サフワは06年後半から米軍に協力し、反体制勢力対策に貢献した。

 さらにイラク北部の都市モスル(Mosul)で軍の検問所が銃撃され、兵士2人が死亡した。

 22日の連続爆発と銃撃事件による死者は合わせて67人となり、イラク全土の17都市で爆発が相次ぎ、計74人が死亡、200人以上が負傷した8月15日以降で最悪のものになった。

■政治混乱の中4か月ぶりの惨事

 イラクでは18日に駐留米軍の撤退が完了したばかり。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は15日に行ったイラク戦争終結宣言で「安定かつ自立した主権国家イラク」を同国民の手に委ねると述べたが、宗派間対立を内包した脆弱(ぜいじゃく)な連立政権のほころびが表面化している。

 19日、スンニ派指導者の1人、タリク・ハシミ(Tareq al-Hashemi)副大統領にテロ関連容疑で逮捕状が出されたことをめぐり、シーア派のヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相率いる連立内閣は紛糾している。ハシミ氏と同じ世俗派の政党連合「イラキーヤ(Iraqiya、イラク国民運動)」に属し、マリキ政権を「独裁体制」と呼んだサレハ・ムトラク(Saleh al-Mutlak)副首相の辞任もマリキ首相は求めている。

 イラキーヤ側が議会審議と閣議をボイコットすると、マリキ首相は閣僚の入れ替えと連立解消を示唆。21日にバグダッドで記者会見したマリキ首相は、クルド自治区当局にハシミ副大統領の身柄引き渡しを迫るとともに、閣議のボイコットが続けば閣僚9人を入れ替えると語った。(c)AFP/Prashant Rao