アルカイダへの勝利宣言のとき? 米専門家の分析
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【12月13日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指揮中枢が衰退し、脆弱(ぜいじゃく)化していることを受け、米専門家らは、故ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者が1988年に発足した同グループに対する勝利宣言の時期と方法を検討すべき時が来たと考えている。
5月にビンラディン容疑者がパキスタンで米軍の急襲によって殺害され、8月にはアルカイダのナンバー2、アティヤ・アブドゥルラフマン(Atiyah abd al-Rahman)容疑者も米軍の無人機攻撃で殺害され、アルカイダの指導層は弱体化している。
専門家らは、アルカイダの指揮中枢に残るのはあとわずか2人だと考えている。新指導者のアイマン・ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)容疑者と、戦闘員幹部のアブヤヒヤ・リビ(Abu Yahia al-Libi)容疑者だ。
■「指揮中枢は残り2人」
「基本的に彼らで終わりだ。彼らが殺害されれば、ほとんど終わりに近い」。こう語るのは、米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」と、米陸軍士官学校のテロリズム研究機関「Combating Terrorism Center(テロとの戦いセンター)」に所属するブライアン・フィッシュマン(Brian Fishman)氏だ。
「アルカイダが完全に消え去ることはない」と、フィッシュマン氏はAFPの取材に指摘する。「アルカイダの名の下に、銃を手に取ったり、IED(簡易爆発物)を作る者は絶えないだろう。われわれは、それに耐える方法を学ばなければならない。ちょうど、ネオナチを自称する人物が警察官や黒人を殺害する事件が米国で時々起きていることに、われわれが対処しているように」
フィッシュマン氏は、やがてアルカイダは「一匹おおかみ」たちのネットワークになると予測する。つまり、さらに広範なグループ化には失敗したとみている。
■公式の「勝利宣言」はあるか
米政府は、2001年の9.11米国同時多発テロ以降、非常に巨大で、非常に予算のかかる対テロ・国家安全保障機構を作り出した。この中では現在、多数の民間人や軍人が雇用されている。
アルカイダの脅威が減少すれば、なんらかの予算削減につながる可能性があるため、アルカイダへの勝利宣言を公式に発表するリスクをおかす政府高官はいないだろうと思われる。
米ホワイトハウス(White House)は8日、米国出身者による米国内でのテロや、アルカイダによる米国人イスラム教徒の過激化に対処する政府戦略を実施する計画を発表した。
パキスタンでの元CIA(米中央情報局)作戦担当者、マーク・セージマン(Marc Sageman)氏は「『勝利した』という瞬間は来ないだろう」と語る。「時間が経つにつれ、それについて交わされる会話が減って行き、予算も削減されていくだろう」
■系列組織の脅威続く
新指導者のザワヒリ容疑者とナンバー2のリビ容疑者が殺害された場合、2人に代わるほどの権威や正統性を持つ人物はアルカイダにはいないだろうと専門家らはみている。
「小物の指揮官が台頭してくるかもしれない。だが、彼らには名声が足りないことをわれわれは知っている。リビ容疑者でさえ、ぎりぎりのラインの交代だ。リビ容疑者には正統性の面で問題さえあるかもしれない」(マーク・セージマン氏)
一方、専門家らは、アルカイダの系列組織に注意が必要だと指摘する。9月に殺害されるまで米国生まれのアンワル・アウラキ(Anwar al-Awlaqi)師が率いていた「アラビア半島のアルカイダ(Al-Qaeda in the Arabian Peninsula、AQAP)」や、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic Maghreb、AQIM)」などといった組織は今後も存続し、大きな脅威となる可能性が高い。
とはいえ、米国は「テロとの戦い」に人的・資金的な犠牲を払いすぎたのかもしれず、ギアチェンジの時を迎えているのかもしれない。
フィッシュマン氏は「今後も米国、フランス、英国などで攻撃があるだろう。それを背負いながら、やっていくことはできる。だが、米国の外交政策全体が、その脅威の人質となることは許容できない」と述べた。(c)AFP/Michel Moutot
5月にビンラディン容疑者がパキスタンで米軍の急襲によって殺害され、8月にはアルカイダのナンバー2、アティヤ・アブドゥルラフマン(Atiyah abd al-Rahman)容疑者も米軍の無人機攻撃で殺害され、アルカイダの指導層は弱体化している。
専門家らは、アルカイダの指揮中枢に残るのはあとわずか2人だと考えている。新指導者のアイマン・ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)容疑者と、戦闘員幹部のアブヤヒヤ・リビ(Abu Yahia al-Libi)容疑者だ。
■「指揮中枢は残り2人」
「基本的に彼らで終わりだ。彼らが殺害されれば、ほとんど終わりに近い」。こう語るのは、米シンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション(New America Foundation)」と、米陸軍士官学校のテロリズム研究機関「Combating Terrorism Center(テロとの戦いセンター)」に所属するブライアン・フィッシュマン(Brian Fishman)氏だ。
「アルカイダが完全に消え去ることはない」と、フィッシュマン氏はAFPの取材に指摘する。「アルカイダの名の下に、銃を手に取ったり、IED(簡易爆発物)を作る者は絶えないだろう。われわれは、それに耐える方法を学ばなければならない。ちょうど、ネオナチを自称する人物が警察官や黒人を殺害する事件が米国で時々起きていることに、われわれが対処しているように」
フィッシュマン氏は、やがてアルカイダは「一匹おおかみ」たちのネットワークになると予測する。つまり、さらに広範なグループ化には失敗したとみている。
■公式の「勝利宣言」はあるか
米政府は、2001年の9.11米国同時多発テロ以降、非常に巨大で、非常に予算のかかる対テロ・国家安全保障機構を作り出した。この中では現在、多数の民間人や軍人が雇用されている。
アルカイダの脅威が減少すれば、なんらかの予算削減につながる可能性があるため、アルカイダへの勝利宣言を公式に発表するリスクをおかす政府高官はいないだろうと思われる。
米ホワイトハウス(White House)は8日、米国出身者による米国内でのテロや、アルカイダによる米国人イスラム教徒の過激化に対処する政府戦略を実施する計画を発表した。
パキスタンでの元CIA(米中央情報局)作戦担当者、マーク・セージマン(Marc Sageman)氏は「『勝利した』という瞬間は来ないだろう」と語る。「時間が経つにつれ、それについて交わされる会話が減って行き、予算も削減されていくだろう」
■系列組織の脅威続く
新指導者のザワヒリ容疑者とナンバー2のリビ容疑者が殺害された場合、2人に代わるほどの権威や正統性を持つ人物はアルカイダにはいないだろうと専門家らはみている。
「小物の指揮官が台頭してくるかもしれない。だが、彼らには名声が足りないことをわれわれは知っている。リビ容疑者でさえ、ぎりぎりのラインの交代だ。リビ容疑者には正統性の面で問題さえあるかもしれない」(マーク・セージマン氏)
一方、専門家らは、アルカイダの系列組織に注意が必要だと指摘する。9月に殺害されるまで米国生まれのアンワル・アウラキ(Anwar al-Awlaqi)師が率いていた「アラビア半島のアルカイダ(Al-Qaeda in the Arabian Peninsula、AQAP)」や、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic Maghreb、AQIM)」などといった組織は今後も存続し、大きな脅威となる可能性が高い。
とはいえ、米国は「テロとの戦い」に人的・資金的な犠牲を払いすぎたのかもしれず、ギアチェンジの時を迎えているのかもしれない。
フィッシュマン氏は「今後も米国、フランス、英国などで攻撃があるだろう。それを背負いながら、やっていくことはできる。だが、米国の外交政策全体が、その脅威の人質となることは許容できない」と述べた。(c)AFP/Michel Moutot