【10月3日 AFP】建国されたばかりの南スーダンで、部族間でのウシの強奪と報復攻撃が相次いで6月以降に約1000人が死亡しており、国家をおびやかす危機的事態となっていると、国連南スーダン派遣団(UN Mission in South SudanUNMISS)が警鐘を鳴らした。

 UNMISSを率いるヒルデ・ジョンソン(Hilde Johnson)事務総長特別代表は9月27日、首都ジュバ(Juba)で記者団に対し、ジョングレイ(Jonglei)州における暴力激化がUNMISSの最優先事項だと述べた。

 同州では、6月に武装グループによる組織的なウシの強奪が相次ぎ400人が死亡したほか、8月にはMurle部族がLou Nuer部族に報復攻撃を行い、2万5000頭以上のウシを強奪、少なくとも600人が死亡した。「いずれも非常に大規模な、軍隊形式の襲撃だった。新型兵器や衛星電話が使われており、つまり単なるウシ泥棒ではない。極めて気がかりだ」とジョンソン氏は指摘。「手に負えなくなれば、南スーダンで暴力の連鎖が激化するだろう」と危機感を示した。

 南スーダンでは、資産や持参金として価値の高いウシの強奪はめずらしいことではないが、ジョングレイ州における残虐行為は異常だとして、国連は懸念を示している。「深刻な危機だと理解すべきだ。女性や子どもたちに起きたことは、従来のウシ泥棒ではなかったことだ。これは異常事態だ」(ジョンソン氏)

■「北部政府が支援」と南スーダン軍

 一方、南スーダン軍報道官はAFPの取材に、ジョングレイ州のウシ強奪者たちが北部のスーダン政府の支援を受けていたと述べた。「これらの村を襲撃している者たちは、普通のウシ泥棒ではない。今までのウシ泥棒は女性や子どもを殺したり、家を焼き払ったりしなかった。彼ら(今回の襲撃者)は武装グループに勧誘・悪用され、スーダン政府から兵器の支援を受けている」

 現在、ジョングレイ州には大規模な部隊が派遣され、報復行為を食い止めつつ地域社会の和解に向けた取り組みを行っている。だがジョンソン氏は、国連部隊には「応急処置」は可能だが、長期的な平和は南スーダンの政府・軍に頼ることになると指摘している。

 UNMISSは、南スーダンがスーダンから分離独立した7月に設置された。年末には7000人の平和維持部隊が配備されるが、現在はその約半数の人員しかおらず、各地域への部隊配備は「限定的」にとどまっている。(c)AFP