9.11犠牲者の最期の数分間、電話に残された肉声
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【9月9日 AFP】10年前の9月11日、その場所にいた人々は神に祈り、通報して助けを求めた。しかし、人生最期の数分間に電話を手にした人々は皆、祈りが通じないことを悟っていた。
4機のハイジャック機がミサイルと化した9.11米同時多発テロで死亡した約3000人のほとんどは、誰とも話すことなく、生き地獄のような惨状の中で命を落としていった。それでも、何人かの犠牲者は現場にかけつけた救助隊員の無線、携帯電話、オフィスの固定電話や航空機備え付けの電話を通じて、外の世界に最期のメッセージを遺した。
■ツインタワーからの電話
ニューヨーク(New York)の世界貿易センタービル(World Trade Center、WTC)のサウスタワー83階で勤務していたメリッサ・ドイ(Melissa Doi)さん(32)は、4分以上、救急サービスのオペレーターと言葉を交わした。恐怖に震えながら、火災による熱で息ができないと訴えるメリッサさんの声と、彼女を落ち着かせようと感情を抑えた声で慰めるオペレーターの声は対照的だ。
メリッサさん: 「わたし、もう死ぬんでしょ?」
オペレーター: 「ノー、ノー、ノー、ノー、ノー」
メリッサさん: 「死んじゃう」
オペレーター: 「マダム、マダム、お祈りの言葉を」
メリッサさん: 「神様、どうか…」
通信はその直後、メリッサさんの「助けて!」という叫び声とともに途絶えた。
同じくサウスタワーの99階にいた保険ブローカーのケビン・コスグローブ(Kevin Cosgrove)さんも、その時、携帯電話で救急サービスに通報していた。午前9時58分、ケビンさんの「オーマイゴッド……あああああ!」という絶叫は、タワーが崩壊する轟音とともにフェードアウトし、その後電話は切れた。
■留守電に残されたメッセージ
ハイジャック機の乗客たちもまた、残される家族らに電話をかけた。ユナイテッド航空(United Airlines)175便に乗っていたブライアン・スウィーニー(Brian Sweeney)さんは、飛行機がサウスタワーに突っ込む数分前に妻のジュリーさんに電話した。
留守番電話の「1件目のメッセージです!」という明るい自動音声に続いて流れるブライアンさんの言葉は、シンプルでありながら心を揺さぶる。
「いいかい。僕の乗ってる飛行機がハイジャックされたんだ」「とにかく君を愛してる、それだけは覚えていて。良いことをして、楽しい人生を送って欲しい。両親やみんなも。本当に愛してるよ」
■最期の瞬間まで会話を続けた夫婦
ほとんどの犠牲者の家族は、さようならを言えなかっただけでなく、世界貿易センタービルでの犠牲者に至っては遺体が蒸発してしまい、形見すら見つけられずにいる人も多い。
一方、最期の言葉を交わすことが出来た数少ない人たちは、違う類の絶望感にさいなまれた。
ビバリー・エッカート(Beverly Eckert)さんは、9時30分頃に夫のショーン・ルーニー(Sean Rooney)さんからかかってきた電話に飛び上がって喜んだ。ツインタワー内にある職場から避難できたと思ったからだ。
しかし、電話口のショーンさんは「105階にいる」と告げた。
「その瞬間、もうショーンは永遠に帰って来ないんだと悟りました」と、ビバリーさんは記している。電話がつながっていた長い間、ショーンさんはなんども「愛してるよ」とささやいた。「そして、大きな爆発音が聞こえました」
ショーンさんはまだ生きていたが、2人とも爆発音が何だか分かっていた――タワーが崩れ落ちる音だ。「何度も何度も、彼の名前を呼びました。そして、床に座り込んで、受話器を胸に抱え続けました」
2009年に他界したビバリーさんが残した夫との最期の会話は今週、ニューヨーク・マガジン(New York Magazine)に掲載された。(c)AFP/Sebastian Smith
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