【9月2日 AFP】米ニューヨーク(New York)の連邦控訴裁判所に提訴されている民間企業間の不払いをめぐる訴訟で、2001年9月11日の米同時多発テロ後に米中央情報局(CIA)が行ったテロリスト容疑者の秘密移送の実態が浮かび上がった。

 同時多発テロから間もない2002年、ロングアイランド(Long Island)にある個人事業の航空会社スポーツフライト(Sportsflight)は、米政府向けにフライトの提供を始めた。

 スポーツフライトはプライベートジェットのチャーター会社リッチモア・エビエーション(Richmor Aviation)から航空機を確保したが、実際には使用しなかった時間の使用料110万ドル(約8400万円)の支払いを拒否したため、契約違反としてリッチモア社から訴えられた。

 当初、飛行の目的は秘密にされていたが、裁判文書によると「キューバのグアンタナモ湾(Guantanamo Bay)にあるグアンタナモ米海軍基地を発着する飛行であり、各種の移送作戦」であることが分かってきたという。911テロ後のCIAの秘密移送は、テロリスト容疑者を尋問のため第3国へ送るものだった。容疑者の多くが後に拷問されたと語っている。

■複雑な支払いで実態を隠蔽
 
 AFPは1日、グアンタナモに拘束された容疑者たちの権利擁護を訴える英ロンドン(London)の人権団体「リプリーブ(Reprieve)」から1775ページに上る裁判文書の写しを入手した。CIA宛ての請求書や数多くの飛行記録が含まれており、テロ容疑者の秘密移送の詳細を浮き彫りにしている。

 テロ容疑者とされた人たちはブカレスト(Bucharest)、バクー(Baku)、カイロ(Cairo)、ジブチ(Djibouti)、イスラマバード(Islamabad)、トリポリ(Tripoli)など世界各地に移送されていた。

 リプリーブによると、米当局が「最終的に面倒なことになるのを避けるため」、飛行目的をあいまいにする複雑な支払いシステムを使っていたことも裁判文書から明らかになったという。

 2003年1月31日付の文書の中で、チャーター飛行を手配した米国の民間軍事企業ダインコープ・インターナショナル(DynCorp International)は、ケータリング、搭乗員の日当、着陸料や手数料などを含む秘密移送の費用は、10か月間で340万ドル(約2億6000万円)に達したと記している。この出費は全体のごく一部であることから、CIAはテロ容疑者の秘密移送のために莫大な金額を民間企業に支払っていたとみられる。

 AFPの取材に対し、CIAの報道官は「係争中の訴訟、特にCIAが当事者ではない訴訟については通常通りコメントしない」とだけ述べた。米国務省もコメントを拒んでいる。(c)AFP/Michael Mathes