【6月16日 AFP】英テレビ局チャンネル4(Channel 4)は14日、2009年に終結したスリランカ内戦に関するドキュメンタリー番組を放映し、番組中で使用した映像について、内戦末期にスリランカ政府軍が戦争犯罪を犯した証拠だと主張した。

 これに対し在英スリランカ大使館は15日、少数民族タミル人の反政府武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil EelamLTTE)」との武力衝突の中で政府軍が民間人を標的にしたことはないと否定。チャンネル4が放映した映像は事実検証がされていないと指摘し、英国の旧植民地であるスリランカの民族コミュニティー間の憎悪を煽る恐れもあると懸念を示した。

 一方で同大使館は、「チャンネル4からであっても、他の団体からであっても、提起された疑惑が真実だった場合には、スリランカ政府の『過去の教訓と和解委員会(Lessons Learnt and Reconciliation CommissionLLRC)』が全て法的な対応措置を取る」とも明言した。

 また、スリランカ政府寄りの同国紙アイランド(Island)は、チャンネル4のドキュメンタリーについて、内戦で敗北したLTTE側の主張を強化し、独立要求を復活させるものだと批判。「調査が必要なのは、スリランカ政府の戦争犯罪ではなく、チャンネル4のビデオの信憑性のほうだ」と非難した。

■処刑や女性暴行の「証拠」を提示

 チャンネル4のドキュメンタリー『Sri Lanka's Killing Fields(スリランカのキリングフィールド)』は、2009年の内戦終結直前の数週間にわたる総力戦の中で撮影されたとする携帯電話記録や政府の公式映像、LTTE側の映像、衛星画像、写真などを使用して構成された50分の番組。

 これらの中には、捕虜の処刑シーンとされる映像や、政府軍兵士に性的暴行を受けたLTTEの女性戦闘員の遺体とされる映像、民間人が治療を受けている病院が砲撃された跡とされる映像などが含まれ、スリランカ政府軍が戦争犯罪を行った「証拠」だとされている。使われたビデオ映像のうち、処刑シーンなど幾つかについては2人の国連調査官が本物だと保証しているが、スリランカ政府は偽物だと反論している。

 同時に番組は、LTTE側にも「人間の盾」の使用や、政府が設けた避難民センターへの自爆攻撃といった戦争犯罪行為があったとの証拠を提示している。(c)AFP/Amal Jayasinghe