米軍無人機、国外戦域で広がる配備 人員不足の悩み
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【4月26日 AFP】パキスタンやリビアで消耗戦が続く中、米軍の無人機に対する期待が高まっている。一方、無人機を運用するには多くの人員が必要だと米軍幹部は強調する。
無人機を操縦し、地上の標的にミサイルを発射するためには専門のチームが必要だが、米軍幹部によるとこの人員の不足が著しいという。
いまやイラク、アフガニスタン、リビアの3つの戦場で戦う米国は、2001年9月11日の同時多発テロに端を発する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との戦いの中で、無人機を活用する度合いを高めている。
20年前の湾岸戦争では、非常に精度の高い兵器として巡航ミサイル「トマホーク(Tomahawk)」がもてはやされたが、21世紀の兵器は、無人機プレデター(Predator)やリーパー(Reaper)になるだろう。リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐と戦闘を続けるリビアの反体制派は22日、米国が武装無人機の投入を決めたことを歓迎した。
だが一方で、無人機の使用を増やすことには反対論も根強い。特にパキスタンやアフガニスタンでは、無人機が誤って民間人を空爆しているとして、現地の反米感情を高めているとの批判がある。現地の軍幹部によると、パキスタン北西部では22日も、アフガニスタン旧支配勢力のタリバン(Taliban)の武装勢力を標的にした無人機の空爆で23人が死亡したが、そのうち民間人が3人含まれていた。
■決して『無人』ではない 運用に多数のスタッフが必要
無人機は操縦席にパイロットが乗っていないだけで、専門チームの操縦がなければ機能しないと米軍幹部は説明する。「機体の最前部に(操縦席の代わりに)グラスファイバーの部品が付いている点を除けば、このシステムに無人と言える部分は何もない」と、デービッド・デプトゥラ(David Deptula)元空軍少将は語る。
デブトゥラ氏は、英国のシンクタンク、国際戦略研究所(International Institute for Strategic Studies、IISS)の会合で「無人機はとても『人間くさい』ものだ。運用スタッフの人員は、おそらく有人機システムよりも遠隔操作システムの方が多い」と述べた。
無人機による空中警戒待機(CAP)に必要な人員は、地上にいるパイロットや技師、情報分析担当官らなどを含めると最大で180人になるという。4機の機体を使って、指定された空域で24時間態勢の任務を行うのに必要な人員だ。
また、遠隔操縦航空機タスクフォース(Remotely Piloted Aircraft Task Force)でプレデターとリーパーの機能管理を担当するブルース・ブラック(Bruce Black)空軍中佐によると、監視や情報収集に特化した無人偵察機グローバル・ホーク(Global Hawk)の運用には最低でも400人の人員が必要だという。
■米本土から国外の戦闘に参加
1999年には150人しかいなかった無人機を操縦する訓練を受けたパイロットの数は、タリバンやアルカイダとの戦いが続く中、2013年までに10倍以上に増える見通しだ。ブラック中佐によると、米空軍が戦闘地域に現在配備しているプレデターは82機、リーパーは26機。他にも米中央情報局(Central Intelligence Agency、CIA)もパキスタンで無人機を使っている。
「ほとんどの機体を戦場に配備している。機体は戦闘に参加し続ける。入れ替わりで戻ってくることはない。というのも、休憩を与えるためにスタッフを戦場から呼び戻す必要がないからだ」とブラック中佐は指摘する。
無人機の操縦は、米ネバダ(Nevada)州ラスベガス(Las Vegas)に近いクリーチ空軍基地(Creech Air Force base)から行われる。パイロットなどの要員を自宅の近くに置いておけることは、外国での作戦を円滑に遂行する上で非常に役立っていると、ブラック中佐は説明する。
「前線には非常に少ない人員だけを残して、他はすべて米国本土から行う。これは非常に大きな利点だ。人員の90%近くが任務についており、そして常にその状態を保っているのだ。作業室に入って作戦を遂行し、母親の待つ自宅に帰り、土曜日には洗車をして、それでまた(次の週に)戦闘を再開する」
だが、いくら無人機システムが人員を最大限に活用できるといっても、やはり人員の絶対数が不足しているという。
■人員不足だが増える要求
統合無人機システム研究拠点(JUAS COE)の副局長、ディーン・ブッシー(Dean Bushey)大佐は「無人機への要望が急増えている。500人の増員が必要だ」と語り、現在の作戦頻度だと、訓練のために無人機1機を戻すことも不可能だと説明する。
「サンディエゴ(San Diego)のナショナルトレーニングセンター(National Training Center)にMQ-1プレデター1機すら戻すこともできない。全機が戦域に出払っているんだ。新たに無人機が生産されても、それはすぐに戦域に輸送される」
人員不足がただちに解消されることはないだろう。空軍は、空中警戒待機を2011年の50件から、2013年には65件に増やす予定で、これには常時、人員1万2000人と無人機250機が必要になる。
自動化をさらに進めることも解決方法の1つだが、軍幹部は困難だとみている。「(無人機に)自律的に作戦遂行させることは難しいだろう」と米特殊作戦軍(US Special Operations Command)の情報システム要件部門トップのジェームズ・スキュレラティ(James Sculerati)大佐は語る。
同大佐によると、現在の技術は、ユーザーが「確実に標的を認識」して、ある標的と別の標的を見分けることができるよう支援するものであって、人間の命令がないと無人機はどの標的に攻撃すべきかわからない。「人間はそのような判断をかなり上手に行うことができるが、機械はあまり上手くない」と、スキュレラティ大佐は語った。(c)AFP/Mathieu Rabechault
無人機を操縦し、地上の標的にミサイルを発射するためには専門のチームが必要だが、米軍幹部によるとこの人員の不足が著しいという。
いまやイラク、アフガニスタン、リビアの3つの戦場で戦う米国は、2001年9月11日の同時多発テロに端を発する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との戦いの中で、無人機を活用する度合いを高めている。
20年前の湾岸戦争では、非常に精度の高い兵器として巡航ミサイル「トマホーク(Tomahawk)」がもてはやされたが、21世紀の兵器は、無人機プレデター(Predator)やリーパー(Reaper)になるだろう。リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐と戦闘を続けるリビアの反体制派は22日、米国が武装無人機の投入を決めたことを歓迎した。
だが一方で、無人機の使用を増やすことには反対論も根強い。特にパキスタンやアフガニスタンでは、無人機が誤って民間人を空爆しているとして、現地の反米感情を高めているとの批判がある。現地の軍幹部によると、パキスタン北西部では22日も、アフガニスタン旧支配勢力のタリバン(Taliban)の武装勢力を標的にした無人機の空爆で23人が死亡したが、そのうち民間人が3人含まれていた。
■決して『無人』ではない 運用に多数のスタッフが必要
無人機は操縦席にパイロットが乗っていないだけで、専門チームの操縦がなければ機能しないと米軍幹部は説明する。「機体の最前部に(操縦席の代わりに)グラスファイバーの部品が付いている点を除けば、このシステムに無人と言える部分は何もない」と、デービッド・デプトゥラ(David Deptula)元空軍少将は語る。
デブトゥラ氏は、英国のシンクタンク、国際戦略研究所(International Institute for Strategic Studies、IISS)の会合で「無人機はとても『人間くさい』ものだ。運用スタッフの人員は、おそらく有人機システムよりも遠隔操作システムの方が多い」と述べた。
無人機による空中警戒待機(CAP)に必要な人員は、地上にいるパイロットや技師、情報分析担当官らなどを含めると最大で180人になるという。4機の機体を使って、指定された空域で24時間態勢の任務を行うのに必要な人員だ。
また、遠隔操縦航空機タスクフォース(Remotely Piloted Aircraft Task Force)でプレデターとリーパーの機能管理を担当するブルース・ブラック(Bruce Black)空軍中佐によると、監視や情報収集に特化した無人偵察機グローバル・ホーク(Global Hawk)の運用には最低でも400人の人員が必要だという。
■米本土から国外の戦闘に参加
1999年には150人しかいなかった無人機を操縦する訓練を受けたパイロットの数は、タリバンやアルカイダとの戦いが続く中、2013年までに10倍以上に増える見通しだ。ブラック中佐によると、米空軍が戦闘地域に現在配備しているプレデターは82機、リーパーは26機。他にも米中央情報局(Central Intelligence Agency、CIA)もパキスタンで無人機を使っている。
「ほとんどの機体を戦場に配備している。機体は戦闘に参加し続ける。入れ替わりで戻ってくることはない。というのも、休憩を与えるためにスタッフを戦場から呼び戻す必要がないからだ」とブラック中佐は指摘する。
無人機の操縦は、米ネバダ(Nevada)州ラスベガス(Las Vegas)に近いクリーチ空軍基地(Creech Air Force base)から行われる。パイロットなどの要員を自宅の近くに置いておけることは、外国での作戦を円滑に遂行する上で非常に役立っていると、ブラック中佐は説明する。
「前線には非常に少ない人員だけを残して、他はすべて米国本土から行う。これは非常に大きな利点だ。人員の90%近くが任務についており、そして常にその状態を保っているのだ。作業室に入って作戦を遂行し、母親の待つ自宅に帰り、土曜日には洗車をして、それでまた(次の週に)戦闘を再開する」
だが、いくら無人機システムが人員を最大限に活用できるといっても、やはり人員の絶対数が不足しているという。
■人員不足だが増える要求
統合無人機システム研究拠点(JUAS COE)の副局長、ディーン・ブッシー(Dean Bushey)大佐は「無人機への要望が急増えている。500人の増員が必要だ」と語り、現在の作戦頻度だと、訓練のために無人機1機を戻すことも不可能だと説明する。
「サンディエゴ(San Diego)のナショナルトレーニングセンター(National Training Center)にMQ-1プレデター1機すら戻すこともできない。全機が戦域に出払っているんだ。新たに無人機が生産されても、それはすぐに戦域に輸送される」
人員不足がただちに解消されることはないだろう。空軍は、空中警戒待機を2011年の50件から、2013年には65件に増やす予定で、これには常時、人員1万2000人と無人機250機が必要になる。
自動化をさらに進めることも解決方法の1つだが、軍幹部は困難だとみている。「(無人機に)自律的に作戦遂行させることは難しいだろう」と米特殊作戦軍(US Special Operations Command)の情報システム要件部門トップのジェームズ・スキュレラティ(James Sculerati)大佐は語る。
同大佐によると、現在の技術は、ユーザーが「確実に標的を認識」して、ある標的と別の標的を見分けることができるよう支援するものであって、人間の命令がないと無人機はどの標的に攻撃すべきかわからない。「人間はそのような判断をかなり上手に行うことができるが、機械はあまり上手くない」と、スキュレラティ大佐は語った。(c)AFP/Mathieu Rabechault