【4月26日 AFP】アフガニスタン南部カンダハル(Kandahar)の刑務所で24日夜、収容されていた旧支配勢力タリバン(Taliban)の戦闘員500人近くが脱獄した事件で、逃走に使われたトンネルは長さ数百メートルにも及び、掘るのに数か月かかり、アフガニスタン当局の関係者が見て見ぬふりをするか、積極的に協力しなければ不可能だったと専門家は指摘している。

 中にはさらに深読みし、アフガニスタンに駐留する北大西洋条約機構(NATO)軍の撤退が進む中、タリバンとの関係を構築し、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領が進める和平努力を促進するために脱獄計画を見逃したのではないかといった憶測まで出ている。

 いずれにせよ、タリバンが攻撃を強める季節の入り口に大規模な脱獄が成功したことは、タリバンにとって大きな勝利と言えるとの見方は共通している。一方、欧米諸国は今回の事件を、米軍増派が成功したかどうかを見極める鍵だとみなしている。

 政治評論家のハルン・ミール(Haroun Mir)氏は「カンダハルを中心とする地域で追い詰められているタリバンにとって、これ(集団脱獄の成功)は計り知れないほど大きな成功だ。傑出した司令官も何人か解放できたわけだから、士気は上がるだろう」と解説する。

 元外交官で現在はやはり評論家のアハマド・サイディ(Ahmad Sayidi)氏は、タリバン側が「当局の検問所の下も通過していた」と言っているこれほどの長さのトンネルを、誰にも気づかれずに掘ることなどほとんど不可能だろうと指摘する。

 刑務局のアミール・モハマド・ジャミシード(Amir Mohammad Jamshid)長官は、タリバンの脱走者たちが刑務所に勤務している看守の協力を得ていた可能があると認めつつ、「ただしトンネルは刑務所内から掘られていたものではないので、必ずしも内部者の関与があったとは限らない」と述べている。

 政府からは非難がわき起こっている。ワシード・オメル(Waheed Omer)大統領報道官は、今回の集団脱獄を「大惨事だ」と表現し、治安態勢の「ぜい弱性と抜け穴」を暴露するものだと批判した。

■水面下の策謀を見出す専門家も

 しかし、事件に水面下の策謀を見出す専門家もいる。

 NATO軍主導の国際治安支援部隊(ISAF)は2014年までに完全撤退することを目指し、7月から段階的撤退を開始する。そうした状況を背景にカルザイ政権は最近、タリバン勢力の一部との和平交渉を模索している。

 カブール大学(Ahmad Massoud)講師で政治コメンテーターのアフマド・マスード(Ahmad Massoud)氏は、交渉開始に向けてタリバン側が提示した主な条件のひとつが、拘束されている戦闘員らの釈放だと指摘し、その一過程として、当局は大脱走に目をつぶったのではないかと推測する。「あの脱獄は政治的動きだ。アフガニスタン政府が知らずして、あるいは支援なくしては起こりえなかっただろう」

 AFPでは25日、アフガニスタン司法省のモハマド・カジム・ハシムザイ副長官に接触しようと試みたが、これまでに談話は得られていない。(c)AFP/Waheedullah Massoud

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