【3月6日 AFP】アフガニスタンのストリートでよく見かけるスポーツ、とは言い難いが、首都カブール(Kabul)で平和への情熱をもって、数百人の子どもたちにスケートボードを教えているオーストラリア人がいる。

 30代のオリバー・パーコビッチ(Oliver Percovich)さんは2007年、たった3台のスケボーを持ってカブールに到着。その後、スケボー学校兼教育施設「スケーティスタン(Skateistan)」の創設に携わった。今では5~19歳の男子と女子約330人が、このNGOのインドア・スケートパークでスケボーを学んでいる。

 スケーティスタンの目的はスケボーを広めることだけではない。異なる民族的背景を持つアフガニスタンの子どもたちが、互いに信頼を築いていけるよう促進する面もある。

 30年に及ぶ戦乱の末、ほとんどのアフガニスタン人はそれ以外の生活を知らずに育ち、自分と違う民族に対する疑念を常に抱いている。また教育システムも崩壊した上、国際社会による再建支援にもかかわらず学校は今も、特に女子や地方の学校ほどよく、旧支配勢力タリバン(Taliban)の襲撃の的となっている。

 16歳のオマル君は、普段は仕立屋の見習いとして働いている。「学校より楽しいよ。リラックスしたり、練習したり、本を読んだり絵を描いたり…自由なんだ」

 その隣に立っているナワブ君(13)とナリ君(14)は、路上でガムを売ったり車の窓を拭いたりして家計を支えていたときに、スケーティスタンと出会ったという。

■若者が大多数だからこそ教育が国を変える

 元豪政府職員のオリバーさんは、人口の半分が25歳以下のアフガニスタンだからこそ、教育で物事を変えられると信じている。

「スケーティスタンの最終的な目的は、アフガニスタン人同士が信頼とつながりを築くこと。そして民族同士の理解を深めること。ここでは、ホームレスの子どもが大臣の息子と一緒に滑ることだってある。ここでは、いかなる子どもも除外しないアクティビティーを推進している。家でネットを使ってメールを書いているような子と、ペンを初めて手にしたような子をどうやって仲良くさせられるか考えている」(オリバーさん)

 プロジェクトはすべて無料。子どもたちはスケボーを習うだけでなく、英語、ダリー語、絵画、写真、詩、さらにはあやつり人形まで学ぶことができる。クラスが開かれる日は男女別で、女子には女性教師が指導にあたる。

 創設当初の費用は、デンマークやノルウェー、ドイツから出資された。今では個人からの寄付も多く、経済的自立を目指して独自ブランドのウエアも販売している。

 スケーティスタンはカブールだけでなくアフガニスタン北部、隣国パキスタン、さらにはカンボジアでも活動を開始しているという。(c)AFP/Aymeric Vincenot

【参考】「スケーティスタン」のサイト(英語)