【2月2日 AFP】銀行から現金は消え、燃料は不足し、観光は風前の灯火─ホスニ・ムバラク(Hosni Mubark)大統領の退陣を求めるエジプトの反政府デモが2週目に突入した中、エジプト国民は経済的な窮地に立たされ始めている。

 大規模なデモが続いている首都カイロ(Cairo)の銀行は、30日から1日現在まで閉店したままだ。各所のATMの現金は底をつき、現在稼動しているATMでも引き出せる紙幣の枚数は限られている。AFP特派員によると、市内のスーパーマーケットではいつもはクレジットカードが使えるが、現在は現金しか受け付けていない。生活必需品を買いだめしようと、食糧雑貨店に人が殺到した地区もある。

■生活物資が不足

 ガソリンスタンドも多くが閉まっており、開いているスタンドの前には長蛇の列。カイロの商工会議所は31日、店主らに店を開けるよう呼び掛けたがほとんど無視されている。

 31日には無期限ゼネストも呼び掛けられたが、どの程度の影響を与えるのかは不透明だ。多くの店舗や企業はすでに安全上の理由で休業しているからだ。

 喫煙者が多いエジプトではタバコは比較的安価だが、どの売店でも品薄だ。携帯電話のプリペイドカードも足りなくなっている。

 さまざまな物資の不足に募る懸念に応えて当局は、小麦を含めた食糧の備蓄は6月まで尽きないほど余裕があると発表した。

■観光業・企業活動への影響広がる

 一方、主要な外貨収入源である観光業は、1月25日の反政府デモ開始以来、大きな痛手を受けている。欧州の冬を逃れてきた観光客が紅海(Red Sea)やナイル川(River Nile)を訪れるこの時期は、観光業にとって本来書き入れ時だが、ツアーを見合わせる旅行業者が多く、予約は途絶えている。

 デンマークの海運大手A.P. モラー・マースク(A.P. Moeller-Maersk)や仏セメント大手ラファージュ(Lafarge)、日本の日産自動車(Nissan Motor)などエジプトでの操業を停止した外国企業も出ている。

 エジプト航空(Egyptair)は31日から、政府が外出禁止令を出している午後3時から翌朝8時までの国内線、国際線すべてのフライトをキャンセルしており、他の時間帯にも運航スケジュールの変更など影響が出ている。

■国債も格下げ

 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's Investors Service)に1日遅れで同スタンダード&プアーズ(Standard & Poor's)もエジプト国債の格付けを引き下げた。現在起こっている政情不安がエジプトの経済成長を妨げ、国家財政に悪影響を与えるだろうという評価からだ。

 国際通貨基金(IMF)のドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)専務理事は訪問中のシンガポールで、エジプトの状況は失業率の高い国ならばどこでも起こりうると語った。(c)AFP/Fatima El-Bacha