【11月29日 AFP】23日に起きた北朝鮮による韓国・延坪島(Yeonpyeong-do)への砲撃を受け、韓国では政治家や軍幹部、国民の間に北朝鮮に対する強硬な主張が広がり始めている。

 韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領は29日の国民向け演説で、攻撃を「反人道的犯罪」と非難し、北朝鮮が今後も挑発をすれば「応分の対価を支払わせる」と述べた。

 23日、韓国側は砲撃で応戦したものの空爆は行わなかった。韓国のシンクタンク、峨山政策研究院(Asan Institute for Policy Studies)によると27日に韓国全土の1000人を対象に行った世論調査では、砲撃への対応について韓国国民の80%がもっと強く応戦すべきだったと回答した。

 また北朝鮮が新たな挑発をした場合には、回答者の40.6%が本格的な戦争にならない程度の軍事的報復を、33.0%が戦争も辞さずに強く反撃すべきだと回答した。

■高まる強硬論

 米原子力空母も参加して28日に始まった米韓両軍の合同軍事演習を支持する人も多い。一方で28日に行われた米韓合同軍事演習への抗議デモには20人しか集まらなかったという。

 ある専門家は、「哨戒艦・天安(チョンアン、Cheonan)沈没事件までは、世論は、北朝鮮批判と韓国政府の強硬姿勢批判とに2分されていた」と述べる。「しかし今は、世論は北への怒りが大勢を占めている。国民の大半は、さらに挑発行為があれば北に強硬な対応をとることを望んでいる」。

 慶應義塾大学(Keio University)のピーター・ベック(Peter Beck)氏はAFPの取材に「(延坪島砲撃は)天安の沈没とは違う」と指摘し、次のように語った。「天安沈没の原因については、少なくとも多少あいまいなところがある。しかし、この砲撃は休戦協定違反であるだけでなく、民間人に対しても行われた。従って韓国は、北朝鮮の海軍か核関連施設に対する報復攻撃を検討すべきだ」。

 ソウル(Seoul)では多くの市民も同じように考えている。朝鮮戦争とベトナム戦争に従軍した経験があるというファストフード店のアルバイト店員(77)は「われわれは恐れるべきではない。反撃できるようにしておかねば」と語った。(c)AFP/Frank Zeller