【6月8日 AFP】米人権団体「人権のための医師団(Physicians for Human Rights)」は7日、2001年9月11日の米同時多発テロ事件以降、米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)が主導したテロ容疑者への過酷な尋問の際に、医療関係者が尋問技術向上のためテロ容疑者を使った実験や調査を行っていたと発表した。

 同団体によると、医療関係者がCIAの監督の下でテロ容疑者への尋問に参加していたことを示す公式記録を使って報告書を作成した。医師や医療スタッフは、水責めや裸の強要、睡眠遮断、極端な気温下に置く、長期間の隔離などの方法で行われる過酷な尋問に立ち会ったという。

 同団体のナサニエル・レイモンド(Nathaniel Raymond)氏は記者会見で、「医師たちは、目の前で行われている尋問技術や尋問行為が、拷問にあたるとされる水準を定めた司法省の基準に違反しているかどうかの判断を下すためのデータを収集していた」と語った。その上で、実験や調査は「拷問を法的に隠ぺいする役割を果たした可能性がある」として、調査するよう求めた。

 報告書によると、水責めの場合、医療チームは真水から食塩水に変更するようアドバイスしたという。このアドバイスは「表向きは、テロ容疑者が肺炎や水中毒によって血中の塩分濃度が低下する低ナトリウム血症をおこすリスクを減らす名目で行われた」と指摘している。

 これまでにも非人道的な医療行為が行われていたことを示す文書はあったが、同団体は、今回の報告書のもとになった公式記録は医療関係者が積極的に容疑者を使った実験や調査に参加していたことを示す新たな証拠としている。報告書は、この行為について、国内・国際法に違反していることはもちろん、医療倫理にも反する行為だと指摘し、一部は戦争犯罪や人道に対する罪を構成する可能性もあるとしている。(c)AFP/Lucile Malandain