【1月21日 AFP】(一部更新)イラクとアフガニスタンに駐留する米軍が、ケースにキリスト教の聖書の箇所を示す刻印が入ったライフル照準器を使用していることが分かり、米国内のイスラム教徒団体などが20日、強い怒りを表明した。

 この照準器の製造会社トリジコン(Trijicon)と、米陸軍および海兵隊が、80万個を超える同照準器の納入契約を結んでいることが明らかになった。

 米国のイスラム教徒の権利擁護を推進する公共機関、ムスリム公共問題審議会(Muslim Public Affairs CouncilMPAC)は、この契約の存在が明るみになるとただちに、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官に対し、聖書を示唆する文字と数字が記された武器の使用を中止するよう要請した。

 米国防総省のダリン・ジェームズ(Darryn James)報道官は、「決定が真実だとすれば、明らかに不適切。改善措置を検討する」と述べた。

 トリジコンによると、同社ではすでに20年以上前から、「国のために従軍することに対するわが社の信条、信念の表れ」として、照準器のメタルケースに新約聖書の1か所の章と節を示す刻印を入れてきた。

 しかしそうした行為は、2003年のイラク侵攻後に米中央軍が発令した一般命令に直接、違反している。この命令では「いかなる宗教、信仰に改宗させる行為」も厳しく禁じている。

 さらに、この照準器はアフガニスタン軍とイラク軍の訓練にも使用されていることが分かった。

 今週、この問題を米放送局ABCに初めて持ち込んだ団体は、イスラム教徒が大半を占め、米軍の駐留に敵意を抱く武装勢力が存在する国々で、こうした聖書の言葉が刻まれた武器を使用すれば、現地で「キリスト教徒がイスラム教徒を改宗しようとしている」という警戒感が生じ、駐留軍が危険にさらされると警告した。

 一方、英国でも国防省がトリジコンに照準器400個を発注したことを明らかにし、野党の自由民主党(Liberal Democrats)から批判があがっている。国防省では聖書の言葉が記されていることの問題については認識していなかったと説明している。

 AFPが写真で確認したところでは、問題の刻印はヨハネの福音書8章12節を符合化した「JN8:12」で、この箇所には「イエスはまた彼らに語って言われた。『わたしは世の光です。わたしに従う者は、決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つのです』」という言葉が記されている。(c)AFP