【1月10日 AFP】カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(Al-Jazeera)は9日、前月30日にアフガニスタンの米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)の基地で自爆攻撃を行ったヨルダン人の男のビデオを放送した。

 迷彩服を着てひげを生やしたこの人物の名前をアルジャジーラはバラウィ(Balawi)と報じた。アルカイダのアフガニスタンでの活動を指揮するムスタファ・アブ・アルヤジド(Mustafa Abu al-Yazi)司令官は12月末、この男はフマム・ハリル・アブムラル・バラウィ(Humam Khalil Abu-Mulal al-Balawi、32)という人物だと明らかにしている。

■目的はタリバン系組織司令官の復讐

 男は「(イスラム教)国の敵、CIAとヨルダンの情報機関に向けたメッセージ」としたビデオで、「われわれはあなたの血を忘れないとバイトゥッラー・メスード(Baitullah Mehsud )司令官に告げる。米国の内と外で復讐を果たすのはわれらのつとめ」と語り、自爆攻撃が前年8月に米国のミサイル攻撃で死亡したパキスタンのイスラム武装勢力タリバン(Taliban)系組織の指導者の復讐であることを明らかにした。

 武器を手にこのビデオに登場したバラウィ容疑者のとなりには別の男がいた。米国のテロ情報収集企業インテルセンター(IntelCenter)によると、バイトゥッラー・メスード司令官の跡を継いだハキムラ・メスード(Hakimullah Mehsud)司令官だという。

■二重スパイの事実を示唆

 バラウィ容疑者はまた、「神の戦士が脅迫によって自分の宗教を露呈することはなく、また一方の手に太陽を、他方の手に月を与えられたとしてもその宗教を捨てることはない」と述べ、二重スパイだったことをほのめかした。

 イスラム武装勢力系の複数のウェブサイトはバラウィ容疑者を、自爆攻撃の数か月前から西側諸国をだましていた二重スパイだとしている。しかしヨルダンの高官は6日、AFPに対し、ヨルダンは1年前からバラウィ容疑者がもたらした情報を対テロ作戦に役立て、他国の情報機関とも共有していたと証言した。

■「情報機関に操られた」 父親の悲痛な声

 バラウィ容疑者の父親はヨルダンの首都アンマン(Amman)でAFPの取材に応じ、ビデオの男は自分の息子に間違いないことを確認し、息子は複数の情報機関に操られていたと語った。

「私の息子は、息子を操っていた連中に殺された。情報機関が作る混乱に巻き込まれてしまったのだ。私の息子は命を救う医師だった。しかし、感情をもてあそぶ情報機関にたぶらかされてしまった」(c)AFP/Taieb Mahjoub