【10月16日 AFP】英紙タイムズ(Times)が15日、アフガニスタンに駐留するイタリア軍への攻撃を避けるため、イタリア情報機関がイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)に数万ドルの「わいろ」を渡していたと報じ、物議を醸している。

■金を渡して安全確保?

 タイムズが西側軍事筋の話として報じたところによると、アフガニスタンのサロビ(Sarobi)地区にイタリア軍が駐留していた間、タリバンの指揮官や地元軍閥などに情報機関が金を支払い、同地区での安全を確保したという。また、この件について2008年6月に、駐イタリア米大使が買収工作についてイタリア政府に抗議したという。

 さらにタイムズは、イタリア軍から同地区の治安担当を引き継いだフランス軍が、交代直後の2008年8月にタリバンの攻撃を受けて兵士10人が死亡する惨事となったのは、イタリア側が買収工作のことをフランス側に伝達していなかったため、「治安状況を誤認したことが原因」と指摘。「地元勢力を買収して治安を確保するのは1つの手かもしれないが、同盟国にそのことを伝えないのは狂気の沙汰だ」との北大西洋条約機構(NATO)軍幹部のコメントを伝えた。

 タイムズによると、西側の軍高官らは買収工作の存在を知っていたが、仏軍には隠していたという。

■イタリア、フランスは抗議

 これに対し、イタリア首相官邸は「まったく根拠のない非難だ」と報道を強く否定。「ベルルスコーニ政権はタリバンへの金銭の支払いを承認したことはなく、前政権がそのような行為を行っていたとの認識もない」との声明を発表した。

 フランス軍も、報道は「事実無根」と一蹴。Christophe Prazuck軍報道官は、「うわさに過ぎないし、この手のうわさを聞くのは初めてではない」と述べ、記事を裏付ける情報は存在しないと強調した。

 また、NATOが主導するアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)の報道官を務めるエリック・トレンブレー(Eric Tremblay)大将も、AFPの取材に対し、イタリア軍がタリバンを買収していたとの「認識はない」と語った。

■アフガン側はわいろはあったと主張

 一方、アフガニスタン軍高官は、イタリア軍がタリバンにわいろを払っていたのは事実だと主張している。

「サロビでイタリア軍が敵に金を払っていたことは知っている。西部へラート(Herat)州でも、NATO軍に所属するイタリア兵によって同様の合意がなされたとの情報も得ている」

 この高官によると、こうした買収工作はへき地に展開するNATO加盟国軍の多くで行われているという。(c)AFP