【10月16日 AFP】ウサマ・ビンラディン（Osama bin Laden）は家では厳格な父親で、おもちゃや現代的な電化製品を禁じていた。一方で、花を育てるなど自然を愛し、流暢な英語を話し、速く走る自動車には目がなかった――。今月末に発売される本の中で、国際テロ組織アルカイダ（Al-Qaeda）の指導者で9.11米同時多発テロの首謀者として国際手配されている人物の素顔を、夫人と息子が語っている。

　第一夫人のナジュワ（Najwa）さんと4番目の息子オマル（Omar）さんの口からは、結婚当時は熱心なイスラム教徒に過ぎなかった 10代の青年が、イスラム過激派の「世界の顔」へと変容していく様子が語られる。家族は、ビンラディン容疑者に伴って、故国サウジアラビアからパキスタン、スーダン、アフガニスタンへと目まぐるしく移住した。米国に滞在していたこともある。

■笑ったら叱られた子どもたち

　ビンラディン容疑者は17歳でナジュワ夫人と結婚。1979年のイラン革命の直後、パレスチナ人聖職者で師と仰ぐアブドラ・アザム（Abdullah Azzam）と会合するため、夫人を伴って渡米し、インディアナポリス（Indianapolis）とロサンゼルス（Los Angeles）に2週間ほど滞在した。

　それからまもなく、ビンラディン容疑者はアフガニスタンとパキスタンを頻繁に訪れるようになった。ソビエト連邦軍と戦うためで、帰宅するとよく息子たちに、ソ連軍の砲火の中を洞窟や山岳地帯にこもって戦った様子を語り聞かせていたという。

　戦後、サウジアラビアに「英雄」として帰郷したが、家でのしつけは厳しさを増していた。この頃には子どもは12人以上に増えていたが、笑う時に「歯を見せすぎた」だけで道徳的な罪にあたるとして、厳しい罰を加えたという。

■エアコンも冷蔵庫も使用禁止、でも車には傾倒

　一方、ナジュワ夫人は、新しい妻たち（うち1人はナジュワさんが「推薦」した）とともに、他の家族とは隔離されていた。家には、暑さの厳しいサウジアラビアやスーダンでの生活を楽にしてくれるような電化製品は一切なかったという。

　オマルさんが振り返る。「父は、アパートに作り付けのエアコンがあっても、母がスイッチを入れるのを決して許さなかった。台所にある冷蔵庫さえ使わせなかった」

　現代的なものを嫌悪する一方で、速く走る自動車をこよなく愛していた。家にはゴールドカラーのメルセデス（Mercedes）など数台の車があり、スピードボートを購入したこともあった。

「砂漠まで車を飛ばし、車を置いて砂上を何時間も歩き回る――そんな1日ほど、彼を満足させたものはなかった」（ナジュワ夫人）

■ヒマワリ育てつつアルカイダを組織、砂漠で家族を訓練

　サウジアラビアへの米軍配備を声高に非難したことからスーダンに国外追放された後は、刺客をかわしながらアルカイダのネットワーク作りに励むようになる。それと同時に、ヒマワリの栽培に精を出すようになった。

「彼は土いじりが好きだった。最良のトウモロコシ、最大のヒマワリを作ろうとがんばっていた」（ナジュワ夫人）

　だが、こうした自然への愛は、激しさを増す政治問題への熱情に彩られていた。

　夜になると、家族全員に、砂漠で寝ることを強制した。厳しい冷え込みの中、土が布団代わりだった。昼間は、息子たちに、標高の高い砂丘のてっぺんまで水を持たずに登るよう強制した。いずれも、さらに困難な時を迎える前に彼らを鍛えるためだった。

■好物はマンゴー、息子たちは才能を尊敬

　楽しいひとときもあった。息子たちは、乗馬がうまく、流暢な英語を話し、計算にも強かった父親を尊敬していたという。

「父の暗算の才能はよく知られていて、よく男たちが家にやってきては、電卓と勝負させられていた。いつも父が勝った」（オマルさん）

　果物、特にマンゴーが好物。紅茶には角砂糖を2個入れる。好きな食べ物は、臓物を詰めたズッキーニ。そしてラジオでいつもBBCを聞いていた。

　この本には、彼の習性、そして居場所に関する手がかりが随所に含まれていることは間違いない。

　例えば、ヘリコプターを操縦できること、時々マラリアの発作に見舞われること、少年時代の事故で右目がほとんど見えないこと、その治療をロンドンで受けたことなどは、これまで知られていなかったことだ。(c)AFP/Andrew Beatty