【5月1日 AFP】米国務省は30日に発表したテロに関する年次報告書で、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)は引き続き米国および国際社会への最大の脅威と位置づけた。また、イランを「最も活発なテロ支援国家」と非難した。このほか、シリア、スーダン、キューバがテロ支援国家に名を連ねたが、2008年に除外された北朝鮮は入っていない。

 報告書は、アルカイダの組織力は弱体化しているとしながらも、アルカイダは潜伏拠点をアフガニスタンからパキスタン政府の統治域外であるパキスタン北西部の部族地域に移し、協力者とともにアフガニスタンに送り込む戦闘員やテロリストの育成・訓練などを行っていると指摘。2001年9月11日の米同時多発テロ前の作戦実行能力を回復しつつあると警告した。

 テロ対策専門家によると、パキスタン内で前年に起きた攻撃事件は、2007年の890件から倍以上に増えた1839件に上る。同様に、攻撃による死者数も1340人から2293人に増えている。

 一方、イランについては、中東、欧州、中央アジア全域において「引き続き、最も活発なテロ支援国家」と断定。なかでもイラン革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)のエリート組織、コッズ部隊(Qods Force)を、パレスチナ自治区、レバノン、イラク、アフガニスタンなどでテロリストを養成・支援していると名指しで非難した。報告書は、コッズ部隊が、小型の武器を用いた少数部隊での戦闘方法をイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)に指導しているとしている。

 また、イランの同盟国シリアについても、レバノンのイスラム教シーア(Shiite)派原理主義組織ヒズボラ(Hezbollah)やパレスチナのイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の戦闘員を支援していると非難している。これらの組織指導者の一部はシリアの首都ダマスカス(Damascus)を拠点としている。

 スーダンに関しては、米国の対テロ政策に対するスーダン政府の協力姿勢を評価する一方で、アルカイダ信奉組織やハマスのスーダン領土内における活動を許していると指摘した。

 長年、米国が経済制裁を課している「共産主義国家キューバ」については、スペイン北部バスク(Basque)地方の分離独立を目指す非合法組織「バスク祖国と自由(ETA)」やコロンビアの左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(Revolutionary Armed Forces of ColombiaFARC)」など、「テロリストに潜伏の場を提供している」と批判した。

 報告書は、これらの組織メンバーは、スペインやコロンビア政府との和平協議のために前年にキューバを訪れ、そのままキューバ滞在を続けていると指摘した。(c)AFP/Lachlan Carmichael