【4月13日 AFP】夜明け前、米軍のハンビー(高機動多目的走輪車)6台が急襲された。道路脇で爆弾がさく裂し、銃撃戦となる。しかしこれは、米ルイジアナ(Louisiana)州にあるフォートポーク(Fort Polk)基地の中での出来事。数週間以内にアフガニスタンに派遣される第82空挺(くうてい)師団が、ここで特別訓練を受けている。

 同師団の第4旅団約4000人が、約400平方キロもの広大な基地で、3週間にわたって訓練を重ねている。命の危険はないが、アフガニスタンの武装勢力との戦闘に備えた極めて重要な訓練だ。近々、全く同じ状況に実際に直面するかもしれないのだ。

 フォートポーク基地司令官のジェームズ・ヤーブロー(James Yarbrough)准将は、「部隊の最悪の日は、戦闘中ではなく、ここで迎えておくのが望ましい」と話す。

■リアルさを追求、ハリウッド効果も

 訓練では、「興奮状態と切迫感」を演出するため、ハリウッド映画で用いられるような各種の特殊効果や、本物の血を使用する。

 アフガニスタンの町がそのまま再現されたような「ダグリ(Dagri)」という架空の町で、白いチュニックとパコル(毛糸の帽子)という伝統的なアフガニスタンの衣装をまとった男が、明らかに興奮した様子で兵士たちに近寄ってきた。男は、「お前は司令官か?おれのカネはどこだ?」と兵士らに絡む。「おれのカネをよこせ!お前らはおれの土地を奪いやがったってのに、おれは一銭だってもらっちゃいねえ」。

 こうした地元民を演じるのは、たいてい、米国に移住したアフガニスタン人のアルバイトだ。町中を徘徊する村人たち。ヤギの群れの番をする男。頭からつま先までをブルカですっぽりと覆い、顔の網状の部分から兵士たちを観察する女性たち。架空のアフガニスタンでは、リアルさがとことん追求される。

■地元民とのコミュニケーションを重視

 兵士たちが直面するのは、実際に現地で起こった出来事を基にした訓練だ。市民の暴動、地元長老たちとの会談、検問所での監視業務など、あらゆるシナリオが想定されている。

 訓練の最後には、地元民を演じた役者たちや軍将校を含めた参加者全員が訓練内容を入念にチェックし、良かった点や改善点などが話し合われる。たとえば、「手を広げる」しぐさは友好のサイン、というような、地元民とのコミュニケーションに重点を置いた確認がとられるという。

 兵士らに絡んだ男を演じたアフガニスタン移民の男性は、「兵士がどういう反応をするか、どんなふうにわたしに話しかけるかを確かめたんだ」と話した。(c)AFP/Stephane Delfour-Given