【12月29日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)とエジプトとの境界の町ラファ(Rafah)で28日、イスラエル軍の空爆から逃れエジプトに入国しようとするパレスチナ人が検問所や境界壁に殺到し、阻止しようとするエジプト警察が威嚇射撃を行って追い返す事態となった。

■物資輸送トンネル破壊でパニック

 ラファはガザ地区からイスラエルを通らず出国できる唯一のルートで、境界線沿いにはエジプトから物資を密輸するトンネルが何本も通っている。地元当局者によれば、イスラエル軍の空爆は境界線に沿って行われ、このトンネルの破壊を目的としたものとみられる。

 治安関係者や複数のメディアによると、境界線付近では銃撃戦が発生し、警察官1人が死亡、1人が負傷したという。誰が発砲したのかはこれまでのところ明らかになっていない。エジプト治安当局は検問所を封鎖し、壁を乗り越えるなどして入国したパレスチナ人を捜索している。

 エジプト側は、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が負傷したパレスチナ人の搬送を許可しないと非難している。一方のハマスは、搬送のための医療支援を求めており、ラファでは緊張が高まっている。

■高まる人道危機の懸念

 ガザ地区では人道危機の懸念も高まっている。英援助団体オックスファム(Oxfam)は同日、空爆でガザ地区内の援助団体が活動停止に追い込まれていると指摘。軍事行動が中止されない限り、数万人が人道危機に陥るとして、国際社会の介入を訴えた。

 赤十字国際委員会(International Committee of the Red CrossICRC)も、空爆による被害者の増加に懸念を示し、「(経済封鎖で)すでに大きな負担がかかっているガザ地区内の病院に負傷者が殺到し、危機的な状況になっている。医療器具や医薬品はすでに底を突いている」との声明を発表した。

 こうした中、イスラエルのエフド・バラク(Ehud Barak)国防相は28日、支援物資を積載した100台以上のトラックのガザ地区内への移動を承認した。トラックには、トルコやヨルダン、国際組織などから寄付された輸血用血液や基本食料品、医療機器、救急車10台、燃料などが積載されているが、トラックがガザ地区に入れるのは1回限りだという。(c)AFP