【12月3日 AFP】クラスター(集束)爆弾の恐ろしさは、その殺傷力のみならず、多数の不発弾を残すことで戦争終結後も長期にわたって無垢の市民らに被害を及ぼし続けることだ。

 こうした非人道性にも関わらず、これまでクラスター爆弾の使用を制限する国際的な合意は成されてこなかったが、ようやくノルウェーのオスロ(Oslo)で3日、100を超える国々の代表が集結し、クラスター爆弾の使用を禁止する条約に署名する。

■ クラスター爆弾とは?
【図解】クラスター爆弾の仕組み

 航空機で上空から親爆弾を投下、空中爆発させ、中に入っている数百の子爆弾を広範囲にばらまく。子爆弾は地上に落下した時点で爆発し、広域に被害をもたらす。爆発しなかった子爆弾は不発弾として「地雷」の役目を果たす。

■ 軍事利用目的

 敵兵の殺傷のほか、敵軍基地の滑走路の破壊、敵軍の陸上通行を阻止する目的でも使用される。

 クラスター爆弾が初めて使用されたのは、第二次世界大戦中だ。最近では、米軍がイラクやアフガニスタンで使用したほか、2006年にはイスラエルがレバノン南部でのイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ(Hezbollah)」との戦闘で使用した。この時に飛散した子爆弾の数は400万発といわれる。

■ クラスター爆弾の非人道性

 兵士だけでなく一般市民を巻き込み、無差別に殺傷する。

 クラスター爆弾廃止を求める団体によると、投下された爆弾の5%から40%が不発弾として残り、戦闘が終結した後も、長期間、被害をおよぼす。

 また、クラスター爆弾が埋もれているとみられる地域では、農作が不可能となる。

 さらに、子爆弾の多くは鮮やかに色づけられているため、子どもらが知らずに手にとり爆発し、被害をうける例も少なくない。

■ クラスター爆弾の被害

 地雷廃絶運動に取り組む国際NGO「ハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International)」によると、1965年以後、少なくとも4億4000万発のクラスター子爆弾が世界各地に投下された。このうち3億8300万発がベトナム戦争の舞台となったベトナム、ラオス、カンボジアに投下されている。

 このほか、中東、アフリカ、旧ユーゴスラビア諸国、中央アジアなどでも、紛争が終了しているにも関わらず、多数の民間人がクラスター爆弾の被害に巻き込まれている。

 1965年以降、クラスター爆弾により死亡、または重度の身体障害を負った人びとは10万人を超える。このうち民間人が98%とほとんどを占め、子どもの被害者も27%に上る。

 同NGOによると、現在も3300万発のクラスター爆弾が、検知されずに不発弾のまま放置されているという。

■ クラスター爆弾禁止に向けた動き

 2008年5月、アイルランドの首都ダブリン(Dublin)でクラスター爆弾に関する国際会議が行われ、同爆弾の使用、製造、輸送、備蓄を禁止する条約案を全会一致で採択。12月3日、ノルウェーのオスロに100か国以上の代表が集まり、同条約に署名する。

 クラスター爆弾の主要使用・製造国の米国、ロシア、中国、イスラエルなどは、同条約に参加していないが、禁止条約の発効はこれらの未参加国に対しても、クラスター爆弾の使用を制限する圧力となるものと期待される。(c)AFP