【11月10日 AFP】米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙(電子版)は9日、ジョージ・W・ブッシュ(George W Bush)政権下で米軍特殊部隊が広範囲にわたる戦闘遂行権限を付与され、パキスタンやシリアなどの他国領内でおよそ10回にわたり、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)などイスラム組織に対する極秘作戦を実施していたと報じた。

 ある米高官の談話として同紙は、2004年の早い時期に当時のドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)前国防長官が署名し、ブッシュ大統領が承認した極秘命令のなかで、こうした権限が軍に与えられていたと伝えた。

 報道によるとこの命令は、米政府が敵対勢力とみなすアルカイダなどの目標を、世界のいかなる場所でも攻撃することを米軍に許可していた。米国と交戦中でない国の領土での行動も認めていたほか、追加承認も必要もないとしていた。

■武装勢力への攻撃をCIA本部へ生中継

 この権限に基づき、米海軍特殊部隊は2006年にパキスタン北西部の部族地域バジョール(Bajaur)地区で、イスラム武装勢力の拠点とみられた施設を奇襲したと、ある米中央情報局(CIA)元高官が同紙に証言した。

 さらにこの作戦では、ビデオカメラを搭載した無人偵察機プレデター(Predator)を現地に派遣し、米バージニア(Virginia)州にあるCIA本部で、軍の作戦立案担当官らが戦闘の様子を生中継で観ることができるようになっていた。

■イランへは偵察作戦のみか

 また2007年10月26日には、シリアで米軍特殊部隊がCIAと合同で作戦を実施したという。

 そのほかの極秘作戦に関する情報は明らかになっていないが、タイムズ紙によると、対象とする国にイランは含まれていなかったと複数の高官が断言している。しかし同紙は、この命令以外の極秘指令によってイラン領内への偵察作戦は実施されたと伝えている。

■実行中止の作戦もほぼ同数

 また、過去4年間で中止された作戦もおよそ10件に上るという。作戦実行による危険が大きすぎるとされた場合や、外交的に大問題に発展する恐れのあった場合、攻撃を正当化する証拠が不十分な場合などだったとされる。

 2004年にこの極秘命令が出されるまで、国防総省では作戦ごとに承認を得ることになっており、承認までに数日かかることもあった。しかし、それに不満を感じたラムズフェルド長官が、イラクとアフガニスタンの戦闘地域外の場所では、案件ごとの承認がなくても作戦を実施する許可を求めて、強い圧力をかけたという。

 同紙によると、この極秘命令ではアルカイダの活動拠点や潜伏先がある国として、シリアや、パキスタン、イエメン、サウジアラビアや、そのほかペルシャ湾岸諸国数か国を含む15-20か国の名が挙げられていた。(c)AFP