海賊事件で浮かび上がる武器輸出大国、ウクライナ
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【10月3日 AFP】ソマリア沖で戦車などロシア製兵器を積載したウクライナの貨物船が海賊に乗っ取られた事件は、ウクライナが世界で10位以内に入る武器輸出大国である事実を浮き彫りにした。
専門家の間では、数々の不正武器輸出疑惑を経て、ウクライナの武器輸出管理は大幅に改善されたとの見方が高い。しかし、ウクライナが依然として世界の最貧国家や武装勢力に武器を供給する可能性は変わらず、親欧米的な現政権の汚点となっている。
ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)のPaul Holtom研究員は、ウクライナの武器輸出管理は近年、目覚ましい向上を遂げたとしながらも、武器が反政府武装勢力の手に渡らないとの確信を世界に与える必要があると説く。
海賊に乗っ取られたウクライナの貨物船「MV Faina」号について、米海軍は29日、ケニアではなく実際はスーダンに向かっていたと主張。ウクライナとケニアの両政府はこれを否定したが、貨物船を乗っ取った海賊はスーダンに向かっていると語ったことから、ウクライナの武器輸出疑惑が浮上した。
SIPRIによると、ウクライナは2003年から2007年の5年間、武器輸出で常に世界のトップ10に入っていた。
ウクライナ・キエフ(Kiev)にあるシンクタンク「Centre for Army Conversion and Disarmament Studies」の軍事アナリストMykhailo Samus氏によると、武器の輸出先は約50%が旧ソ連を構成していた独立国家共同体(Commonwealth of Independent States、CIS)向けで、30%が東南アジア・アフリカ、6%が中東向けだ。ウクライナは2007年、20か国に12億ドル(約1260億円)の武器を輸出したが、これは前年の輸出高10億ドル(約1050億円)よりも増加している。輸出の内訳は、戦車、軍用機、迫撃砲、ミサイルなどで、武器関連サービスも含まれているという。
一方で、ウクライナは1990年代、ブルキナファソ経由でリベリアへの武器輸出など、問題のある国家や政権に武器を輸出していた疑惑が持たれている。2002年には米国も、当時のサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権下のイラクに対する経済制裁に違反し、ウクライナがイラクに軍事レーダーシステムを輸出していると非難している。
しかし、これを機に欧米が積極的に関与し、その結果、現在のウクライナの武器輸出管理は、世界で最も優れたもののひとつになったとSamus氏は言う。
また、アナリストのOlexi Melnik氏は、今回の疑惑は、ライバル国が武器輸出市場でのウクライナの「風評被害」を狙って、積荷の武器の行き先について偽の情報を流した可能性もあると指摘する。
それでも、依然としてウクライナに疑惑を抱く人も多い。SIPRIはウクライナに対し、冷戦後の世界で築かれた無責任な武器輸出国という負のイメージを払拭するため、更なる努力を求めている。(c)AFP/Anya Tsukanova
専門家の間では、数々の不正武器輸出疑惑を経て、ウクライナの武器輸出管理は大幅に改善されたとの見方が高い。しかし、ウクライナが依然として世界の最貧国家や武装勢力に武器を供給する可能性は変わらず、親欧米的な現政権の汚点となっている。
ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)のPaul Holtom研究員は、ウクライナの武器輸出管理は近年、目覚ましい向上を遂げたとしながらも、武器が反政府武装勢力の手に渡らないとの確信を世界に与える必要があると説く。
海賊に乗っ取られたウクライナの貨物船「MV Faina」号について、米海軍は29日、ケニアではなく実際はスーダンに向かっていたと主張。ウクライナとケニアの両政府はこれを否定したが、貨物船を乗っ取った海賊はスーダンに向かっていると語ったことから、ウクライナの武器輸出疑惑が浮上した。
SIPRIによると、ウクライナは2003年から2007年の5年間、武器輸出で常に世界のトップ10に入っていた。
ウクライナ・キエフ(Kiev)にあるシンクタンク「Centre for Army Conversion and Disarmament Studies」の軍事アナリストMykhailo Samus氏によると、武器の輸出先は約50%が旧ソ連を構成していた独立国家共同体(Commonwealth of Independent States、CIS)向けで、30%が東南アジア・アフリカ、6%が中東向けだ。ウクライナは2007年、20か国に12億ドル(約1260億円)の武器を輸出したが、これは前年の輸出高10億ドル(約1050億円)よりも増加している。輸出の内訳は、戦車、軍用機、迫撃砲、ミサイルなどで、武器関連サービスも含まれているという。
一方で、ウクライナは1990年代、ブルキナファソ経由でリベリアへの武器輸出など、問題のある国家や政権に武器を輸出していた疑惑が持たれている。2002年には米国も、当時のサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権下のイラクに対する経済制裁に違反し、ウクライナがイラクに軍事レーダーシステムを輸出していると非難している。
しかし、これを機に欧米が積極的に関与し、その結果、現在のウクライナの武器輸出管理は、世界で最も優れたもののひとつになったとSamus氏は言う。
また、アナリストのOlexi Melnik氏は、今回の疑惑は、ライバル国が武器輸出市場でのウクライナの「風評被害」を狙って、積荷の武器の行き先について偽の情報を流した可能性もあると指摘する。
それでも、依然としてウクライナに疑惑を抱く人も多い。SIPRIはウクライナに対し、冷戦後の世界で築かれた無責任な武器輸出国という負のイメージを払拭するため、更なる努力を求めている。(c)AFP/Anya Tsukanova