【9月28日 AFP】イラクにおける米国の軍事的存在が高まったことで後退を余儀なくされたイスラム原理主義勢力は、新たな軍事拠点としてイエメンに注目している。専門家らが語った。

 イエメンでは、この数か月の間に国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に関連したグループによって警備会社や原油関連施設が度々攻撃をうけ、また、過去半年の間に米国に関連した施設へ2度の攻撃があった。

 9月17日には、イエメンの首都サヌア(Sanaa)の米大使館が攻撃され、犯行声明を出したイスラム武装勢力の戦闘員を含む18人が死亡していた。

 専門家によると、これらの攻撃は、一時は沈静化したと思われていたイスラム原理主義組織によるテロが復活していることを示しているという。

■武装勢力からみたイエメンの「魅力」

 広大で山地の多い国土を持つイエメンでは、国家権力の及ばない地域もあり、アルカイダの追随者らが、刷新され若返りを果たした指導者のもとで新たな下部組織を作る機会をうかがっている。

 ニュースサイト「NewsYemen」のNabil al-Soufi編集長によると、イエメンはいくつかの理由で、イスラム武装勢力にとって魅力的だという。

 同編集長によると、イエメンの乾燥地帯や山岳地帯には、国家権力の及ばない「豊かな環境」があり、アルカイダにとって「誰にも察知されずに、訓練施設を建設することができる」場所となっている。

 また、イエメンがサウジアラビアと隣接していることも一定の役割を果たしていると、フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)でイスラム原理主義を研究するドミニク・トマ(Dominique Thomas)氏は話す。

 トマ氏によると、武装勢力にとってイエメンの重要度が増した1つの要因は、サウジアラビアで起きた激しい弾圧で多くの原理主義者らが周辺国に拡散したことだという。

■武装勢力とは対立せず

 トマ氏は、この分野の他の専門家らの意見に同意し、イエメン政府が、イスラム武装勢力を重大な脅威としてみておらず、今までに何度かの局面で、対立より協定を結ぶことを選択してきたと述べる。

「イエメン政府はこれまでずっと、イスラム原理主義や部族との関係を優遇することで、最大の脅威である北部のシーア派や南部勢力に対して権勢を強化してきた」とトマ氏は語った。

 プリンストン大学(Princeton University)のGregory Johnsen教授は、実際にイエメン政府が、イスラム原理主義勢力による攻撃を数多く未然に防止していると話す。

 Johnsen教授は、「政府は、アルカイダ内の人物らと複数の協定を結んでおり、イエメン国内で攻撃を行わないとの約束をさせている」と語った。(c)AFP/Michel Moutot