【9月24日 AFP】アフガニスタン南部のカンダハル(Kandahar)を出発したバスには、満員の55人が乗車した。彼らの大半は、これから始まる首都カブール(Kabul)までの長旅の危険性について、充分に承知している。

 バスが総延長450キロの高速1号線(Highway One)に入ると、乗客の間には緊張感がみなぎる。ここは、旧支配勢力タリバン(Taliban)戦闘員や強盗によるバスジャックが頻発している現場なのだ。
 
 乗客たち、そしてAFP記者でさえ、西洋風の服は敢えて着ない。目立つのは危険だ。多国籍軍の「スパイ」と間違われて殺されるリスクを負うことにもなる。

 伝統衣装を身につけ、イスラム教徒の印である「ひげ」を蓄えた人物だけが、高速1号線を乗り切ることができる。

 カンダハルで電話技師をしているという男性は、「この道路を使うときはわざと汚い格好をしている。旅行の数日前から体を洗わないようにしてるんだ」と話す。

 身分証明書など、政府や国際組織を連想させる物は持たない。文字が読めることを示す物も、持たない方が無難だ。携帯電話の番号はすべて消去する。専門職の人間は、平凡な労働者にわざと身をやつす。

 カラート(Qalat)市の手前で、最初のバリケードにさしかかり、バスが立ち往生する。タリバンが新たな攻撃を仕掛けてきたのだろうか?何の説明もないまま、3時間が経過する。

 ようやく道路が再開。乗客たちの不安な面持ちが、「現場」の横を通るとき、恐怖に変わる。重装備の多国籍軍兵士ら数十人が、装甲車の残がいを片付けているところだ。のちにカブールのNATO軍本部は、仕掛け爆弾で装甲車1台が破壊され、ルーマニア兵1人が死亡したと発表した。

 カンダハルとカブールを定期的に往復するというスペアパーツ販売業者の男性は、「飛行機で行き来できるのなら、なにもここを通ったりはしないさ。この道路はタリバンだらけで危険過ぎる」とぼやく。

 片道110ドル(約1万2000円)もする航空券を買える余裕のある人は数少ない。バスなら片道8ドル(約840円)。自家用車は危険なのでわざわざバスを使う人も多い。

 バスはさらに、軍用トラックのいくつもの残がいと、タリバンに破壊された約20の橋のそばを通り過ぎる。

 前月にNATO軍とタリバン派武装勢力との戦闘で武装勢力側に28人の死者が出たカラート市を抜けると、運転手が「特に危険」と言うガズニ(Ghazni)市に入った。1年前に韓国人のボランティア23人が拉致され、うち2人が射殺された場所だ。

 さらに先のワルダク(Wardak)州では、6月にタリバンによるロケット弾攻撃で米兵3人が殺害されている。 

 高速1号線で繰り広げられてきたこうした攻撃は、ほんの一例に過ぎない。

 アフガニスタン国防省の報道官は「政府を弱体化して存在感を示すために、攻撃は組織化され、周到に用意されている。1回の攻撃でたくさんの注目が集まるし、彼らはこの道路をどれだけの人数が行き来しているかをきちんと把握している」と話す。

 高速1号線の建設は、タリバン政権崩壊後の重点的な開発プロジェクトの1つで、米国際開発局(USAID)が1億9000万ドル(約200億円)を費やした。2003年に開通し、カンダハル・カブール間をこれまでの2日間から約5時間まで短縮した。

 武装勢力による度重なる攻撃に対応すべく、多国籍軍の支援を受けたアフガニスタン国軍や警察が各所に配備されているが、全域を警備できるだけの人員は確保できていない。(c)AFP