【7月16日 AFP】(一部更新、写真追加)レバノンを拠点とするイスラム教シーア(Shiite)派武装組織ヒズボラ(Hezbollah)とイスラエル政府は16日、捕虜交換を開始した。

 捕虜交換の第1陣としてヒズボラ側は、2年前に拘束したイスラエル兵2人の遺体を収容したひつぎをイスラエル側に引き渡した。

 ヒズボラ高官のWafiq Safa氏がイスラエル国境沿いのナクラ(Naqura)で捕虜交換を開始すると発表。その後、現地に黒い2つのひつぎが到着した。

 2006年7月、イスラエル軍は、Eldad Regev氏とEhud Goldwasser氏がヒズボラ戦闘員によって拘束されたことを受けてレバノンに進攻。戦闘は34日間に及び、レバノン側に1200人、イスラエル側に160人を越える死者が出た。イスラエル側は2人が生存して帰還することに期待を寄せていたが、ヒズボラ側が2人の死亡を発表。イスラエル側は重苦しい雰囲気の中でひつぎの引き渡しを受けた。

 2人の遺体は、赤十字国際委員会(International Committee of the Red CrossICRC)に渡され、遺伝子検査で遺体の身元を確認した後、ヒズボラ側の戦闘員の引き渡しが行われる。

 イスラエルの日刊紙イディオト・アハロノト(Yediot Aharanot)紙は「帰国」という短い、苦渋に満ちた見出しを掲載した。

 一方、レバノンでは、ナクラと南部の港湾都市シドン(Sidon)を結ぶ主要沿岸幹線道路に、捕虜交換を祝う横断幕や旗が掲げられている。また、レバノン内閣は16日を国民の休日にすると発表した。

 イスラエル側の解放予定者の中には、1979年にイスラエル人3人を殺害し、イスラエルを震撼(しんかん)させたイスラム教ドルーズ(Druze)派レバノン人のサミール・クンタル(Samir Kuntar)受刑者などが含まれている。イスラエルで5回の終身刑を受けた同受刑者は、アラブ人として同国で最も長く服役していた。

 他にも、2006年6月から8月にかけてのレバノン進攻で拘束されたヒズボラ戦闘員4人も釈放が予定されている。

 イスラエルでは捕虜交換について、代償が大きすぎるとの批判や、中東地域におけるイスラエルの敵を鼓舞することになるとの非難も上がっている。

 また、兵士2人の遺体と引き換えに、イスラエル側は、この数週間で掘り起こしたパレスチナ人やヒズボラ戦闘員ら199人の遺体を引き渡すことになっている。

 イスラエル政府は15日に、今回の国連の調停による捕虜交換の実施を最終的に決定した。イスラエルとヒズボラとの間で1991年以来8度目の人質交換となる。(c)AFP