【2月26日 AFP】ガザ地区(Gaza Strip)で混乱状態が続き、一部市民の過激化も懸念されるパレスチナ自治区。アナリストらは、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)がそうした現状に乗じ、「イスラエル-パレスチナ間の衝突」を新たな活動領域にすべく画策しているとみる。

■ネットを飛び交う反イスラエル発言

 アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者による過激な反イスラエル発言から、外国人戦闘員に対するガザ地区への侵入の呼びかけまで、アルカイダ台頭の兆候は増すばかりだ。

 ビンラディンはアルカイダ系のウェブサイトで前年12月、「パレスチナの土地のほんの一握りであっても、ユダヤ人国家の存在は認めない。血は血を呼び、破壊は破壊を呼ぶだろう」という声明を出した。

 以来、とりわけ過激で暴力的なインターネット・フォーラムサイトに書き込まれる反イスラエル発言は、ますます敵意に満ちたものになっている。パレスチナ人の若者に向けて、ガザ地区とヨルダン川西岸(West Bank)におけるアルカイダ系組織結成に備えるよう呼びかけるなど、具体的な書き込みも目立つ。

■ガザ地区境界壁爆破と同時期にも

 フランス・パリ(Paris)の社会科学研究院(EHESS)でイスラム原理主義の研究を進めるドミニク・トマ(Dominique Thomas)氏は、前月発生した武装勢力によるガザ地区境界壁爆破と同時期、ネットフォーラム上で「ガザ地区へ侵入してイスラエルとの戦いを指導せよと外国人戦闘員に呼びかける書き込み」を見たことを明かした。同氏はさらに、「最近になってからも、イラクやレバノンで聖戦(ジハード)を呼びかけてきた指導者や首長らによるパレスチナへの呼びかけが多々見られる」と付け加えた。

 たとえば、アルカイダ関連グループとされる「イラク・イスラム国家(Islamic State of Iraq)」の指導者アブ・オマル・バグダディ(Abu Omar al-Baghdadi)はイスラエルについて、「(イスラム共同体である)ウンマ(Ummah)を冒す悪の病原菌であり、駆除されなければならない」と警告している。

 その前日には別の過激派グループ、イスラム教スンニ派武装勢力の「ファタハ・イスラム(Fatah al-Islam)」が、パレスチナ人の大義を「世界規模の聖戦の中心となること」と表現した。

■アルカイダの次なるターゲットはイスラエル

 こうした状況から米中央情報局(CIA)元上級顧問(ビンラディン担当)のマイケル・ショイアー(Michael Scheuer)氏は、「アルカイダと関連グループの標的リストの中で、イスラエルはかつてないほど重要な位置に置かれている」と指摘。「アルカイダは、(ヨルダン、レバノン、シリア、イスラエル、そしてパレスチナ自治区の一帯を指す)レバント(Levant)地域に隣接するイラクに安全な隠れ場所を手に入れたことで、長期的な戦略的勝利を収めたと考えているのだろう」と付け加えた。

 ガザ地区を中心に最近発生した事件は、世界的な聖戦を画策するアルカイダ要員がすでに潜入しているあかしではないかと専門家らは懸念している。

 その典型が、2月15日に起きた武装グループによるYMCA(Young Men's Christian Association)襲撃・爆破事件である。

 テルアビブ(Tel Aviv)近郊ヘルツェリア(Herzliya)のIsraeli International Policy Institute for Counter-Terrorism(反テロリズム・イスラエル国際政策研究所)でイスラム運動を研究するルーベン・パズ(Ruben Paz)氏は事件について、国際テロ組織「サラフィスト(Salafist)」による典型的な犯行と語った。

 パズ氏は「イスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の犯行ではないが、彼らには事件を防止することもできなかった。これは悪い兆候だ。イラクで起きていることが手本になっている」と懸念を示すと同時に、「だがガザ地区のサラフィストのテロ攻撃が成功するようなことがあれば、ハマスは彼らに戦闘をしかけるだろう。ハマスもまた攻撃によって危険にさらされるからだ」と分析した。

 聖戦を唱える武装勢力はガザ地区についに拠点を構えるときを待ちつつ、過激化するパレスチナの若者に対するインターネットでの呼びかけに余念がない。

 Assad al-Jihad 2のハンドルネームで書き込みを行っている人物はパレスチナの若者に、武術の習得、自治組織の設立、そしてガザ地区へ到着する外国人戦闘員への安全な隠れ家の提供を勧めている。(c)AFP/Michel Moutot