【2月20日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)がイラク国内の精神病院からカルテなどを不法に入手し、精神障害を患う女性を自爆犯として雇っている疑いが持たれており、捜査が進められている。

 捜査のきっかけは、首都バグダッド(Baghdad)のペット市場で1日に発生し、100人を超える死傷者が出た自爆テロ事件。米軍によるこれまでの調べでは、実行犯とされる女2人が事件の数週間前に市内の別々の精神病院で治療を受けていたことがわかっている。

 グレゴリー・スミス(Gregory Smith)米海軍将校はAFPのインタビューに対し「アルカイダは、家族にばれないよう個別に容疑者に近づき、テロ要員として雇ったと考えられる」と語った上で、容疑者2人の記録と連絡先を病院職員が外部に漏らした可能性があると指摘した。

「イランのアルカイダ・メンバーが、精神病院のカルテを入手した恐れがある。アルカイダは複数の病院やクリニックとつながりを持っていると考えられる」(スミス氏)

 同氏によれば、地元住民や各精神病院の職員に捜査員が容疑者の写真を見せて聞き込みを行ったのが、2人の身元判明につながった。

 うち1人は統合失調症と鬱症状のため、市内のIbn-Rushd病院に数か月間通院していた。医師には、「自殺しなさい」という声が絶えず聞こえると訴えていたという。

 もう1人も別のクリニックに精神障害のために通院していたことがある。

 スミス氏は2人が精神障害を患っていたことは認めたが、「テロ犯2人はダウン症候群だった」とするイラク当局の主張については病院の記録と異なるとした。

 テロ犯のうち、1人は爆発物を詰めたリュックサックを背負い、もう1人は爆弾ベストを装着していた。2人が互いに面識があったとの情報は得られていない。

 捜査では、市内にあるAl-Rashad精神病院のSahi Abub al-Maliki院長代理が前週、患者のカルテや情報を外部に漏らした疑いで拘束されている。

 ただしスミス氏によれば、1日の事件の容疑者2人はいずれもこの病院では治療を受けていない。

 Ibn-Rushd病院のShalan al-Abbudi医師はAFPに対し、米軍が1日の容疑者の1人と断定する人物が同病院で治療を受けていたことを認める一方、次のようにも語った。

「米軍が写真を持って当院に来た。見覚えがないと言うと、名前を聞かされた。カルテを調べたところ同じ名前の患者がいた。軍はその患者がテロ犯の1人だというが、彼女が本当にテロ犯だったのか、それとも事件の犠牲者だったのかは、わたしにはわからない」

 Abbudi医師はさらにその患者について「鬱症状と統合失調症を患っており、自殺しなさいという幻聴に悩まされていた。(電気ショックを含む)適切な治療を施していた」と語った。

 Abbudi医師は、「いかなる理由でも、当院の患者の記録が外部に漏れる可能性はない」と言い、重篤な障害のある患者も扱う同病院で、職員が事件にかかわるわけがないと主張した。

 過去半年間で最悪規模となった1日の自爆テロの翌日、バグダッド駐留米軍を指揮するジェフリー・ハモンド(Jeffery Hammond)少将は報道陣に対し、「何が起きているのか当人が理解できず、捜査対象にもなりにくい」ことから、2人が利用されたのだろうとの見解を示した。

 バグダッドでは17日にも、市中心部の検問所で、兵士に呼びとめられた後、女が自爆する事件が発生している。

 米軍は事件後の声明の中で、黒い服に身を包んだテロ犯の女に関し、「腹のあたりに何かかさばるものを巻いており、物ごいのように見せかけていた」としている。さらに声明によれば「イラク兵が両手を挙げるよう命じたが、女は片手しか挙げず、もう片方の手に何かを隠し持っているようだった。その何かから、ワイヤーが伸びているのが見えた。兵士が3発発砲すると、女は近くの店に逃げ込み、そこで自爆した」という。

 米軍によれば、17日の自爆テロ犯の女については今のところ、精神障害を患っていたとの証拠は得られていない。(c)AFP/Bryan Pearson