【1月24日 AFP】米国のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領と政府高官が、イラク戦争直前に計935回も虚偽の発言をしていたことが、23日に発表された調査結果で明らかになった。

■イラク侵攻正当化、「虚偽発言」連発

 政治倫理の監視を行う米民間団体「社会健全センター(Center for Public Integrity)」が発表した報告書「False Pretenses(偽りの主張)」では、イラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権の脅威について、ブッシュ政権が慎重に計画された「虚偽報告」を多数行っていたことが明らかになった。

 報告書は、政府当局者8人がイラクの大量破壊兵器保有や、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とのつながりなどについて532件、計935回の虚偽の発言を行ったとしている。

「ブッシュ政権は組織的に虚偽の情報を流して2003年3月19日のイラク侵攻を正当化し、国家を戦争へと導いた」

 一方、ホワイトハウス(White House)は、この調査結果に猛抗議し、イラクの大量破壊兵器保有は国際社会のコンセンサスとなっており、それを考慮した米議会や世界各国の声明を無視していると主張。

 ダナ・ぺリノ(Dana Perino)大統領報道官は、この研究発表を考慮に値しないと退け、「われわれは多数の国々とともに、総合的な情報に基づいて独裁者を排除した」と述べた。

■メディアの報道で効果増大

 これに対し同センターは、ブッシュ政権の戦争への歩みは、2001年9月11日に米同時多発テロが発生した時に始まったと主張する。

 議会が2002年8月にイラク戦争の採決を予定していたことから、数か月間にわたり虚偽の発言が激増した。

 政権幹部による虚偽の発言は、2003年初頭のブッシュ大統領の一般教書演説と、コリン・パウエル(Colin Powell)国務長官(当時)が開戦に向け、米国の決議案を国連安全保障理事会(UN Security Council)に提出したときにピークを迎えた。

 報告書は「これらの虚偽報告は、数千もの追加情報や報道で効果が増大した。メディアは戦争直前の重要な数か月間、無責任に騒ぎ立てていた」と指摘している。

 フセイン政権が大量破壊兵器を大量保有しているとの主張は、世界各国の議会や国連(UN)で、米国主導のイラク侵攻を正当化するために利用されたが、イラク侵攻後、大量破壊兵器がまったく発見されず、主張が真実でなかったことが露見した。

■ブッシュ大統領の虚偽発言は計260回

 ブッシュ政権は「自分たちは誤った情報の犠牲者だ」と主張しているが、今回の報告はこの主張にも疑問を投げかける。

 報告によると、イラクの大量破壊兵器保有とアルカイダとのつながりについて、ブッシュ大統領は計260回の虚偽の発言を行った。

 パウエル元国務長官が254回と虚偽発言は2番目に多い。報告にはディック・チェイニー(Dick Cheney)副大統領、コンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)大統領補佐官(国家安全保障問題担当、現国務長官)、ドナルド・ラムズフェルド(Donald Rumsfeld)前国防長官、ポール・ウルフォウィッツ(Paul Wolfowitz)元国防副長官のほか、大統領報道官らの名前も挙げられている。(c)AFP