【12月27日 AFP】国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)に対する駐イラク米軍主導の戦闘に参加しているイスラム教スンニ派グループなどへの、イスラム過激派による攻撃が増えている。米・イラク両政府がイラクと駐留米軍の将来について協議を進める中、米軍に協力するスンニ派数万人の将来は不安定な状態にある。

 2006年以降、スンニ派アラブ人約7万3000人が駐イラク米軍と同盟関係を結び、アルカイダとの戦いに合流している。これらの大半はフセイン政権崩壊後、米軍と戦った反政府勢力のメンバーだ。

 現在の同盟の流れは2006年9月、スンニ派が多数を占める西部の小さな州アンバル(Anbar)で局地的な動きとして始まったが、その後イラク全土に拡大。この新たな同盟関係は、過去数か月のイラクにおける抗争の激減に貢献しているとされ、高く評価されてきた。

■将来保障なく反政府組織に逆戻りの恐れも

 米軍に協力するスンニ派組織は「民兵組織」と呼ばれることを拒んでいるが、こうした協力者たちの将来は不透明だ。彼らの将来の役割をイラク政府が明確に示していない上、アルカイダの怒りも買っているからだ。

「指導者たちの間に政治的合意がなければ、これらのスンニ派グループが民兵組織に変質することもありうる」と、非政府系シンクタンク「国際危機グループ(International Crisis GroupICG)」のイラク専門家Joost Hiltermann氏は警告する。「収益の分配法などすべての重要問題で指導者間の合意が必要だ。でなければこうしたグループは、治安部隊に吸収されてもされなくても、米軍がいったん撤退を始めれば、戦闘を開始する恐れがある」。

■長期的な信頼関係維持が課題

 米軍は現在、協力関係にあるスンニ派イラク人に対し1人当たり約300ドル(約3万4000円)を毎月支給。契約上では地元地域の自警団的組織に配属されることになっているが、実際にはアルカイダ系の反政府勢力と戦闘する結果になることが多い。

 米国、イラク両当局ともに長期雇用を提供できていないことから信頼関係が崩れ、こうしたスンニ派グループが再度、反政府活動に加わることもありうると専門家は警告している。(c)AFP/Jay Deshmukh