アフガニスタン、2007年は自爆攻撃が多発、タリバン掃討作戦で犠牲者増大
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【12月18日 AFP】アフガニスタンの首都カブール(Kabul)南部で仕立屋を営むアーマド・シュケブ(Ahmad Shkeb)さんは、今でも自身の目の前で起こったその日の光景をはっきりと覚えている。
紺色の車両がバスに突っ込み凄まじい爆発音が鳴り響き、巨大な閃光が拡がった。それが、旧支配勢力「タリバン(Taliban)」による自爆テロだと理解するのに数秒かかった。
シュケブさんが目撃したのは、5日に発生した政府軍のバスを狙ったタリバンの自爆攻撃だ。同テロで、少なくとも兵士6人、子ども4人を含む計13人が死亡している。
爆発で破壊され煙をあげる軍用バスの周囲には、手足が吹き飛んだバラバラ遺体が散乱し、「わたしの生涯で最も恐ろしい光景だった」と20代後半のシュケブさんは恐怖の様子を語った。
■戦闘やテロの犠牲者数が増大、自爆攻撃も前年の2倍
アフガニスタンの2007年の重要な出来事としては、同国最後の国王だったモハメド・ザヒル(Mohammed Zahir)元国王の逝去、世界の麻薬生産量の93%を占めるといわれる麻薬栽培の再増加、緊急な治安部隊強化などがあげられる。
しかし、最も2007年を象徴するのは治安状況の急激な悪化だ。2007年の戦闘やテロなどの犠牲者数は、米軍の攻撃により2001年に旧支配勢力「タリバン」が撤退して以来、最悪となった。
国連(UN)の調べによると、2007年前半の6か月だけで、77件の自爆攻撃が発生。これは、前年同期の2倍、2005年の同期からは26倍という多さだ。
後半に入ってからの自爆攻撃数は140件あまりと、状況はさらに悪化する。
特に11月に北部バグラン(Baghlan)州の製糖工場で発生した自爆攻撃は、視察に訪れた議員や歓迎式典に出席した子どもたちなど80人あまりが犠牲となり、アフガニスタン史上、最悪のテロ事件となった。また、同テロは、これまで南部を中心に攻撃活動を展開してきたタリバン武装勢力の勢力範囲が東部にまで拡大している事実を裏付けた。
北部でも、クンドゥズ(Kunduz)で前年に発生したテロで国際治安支援部隊(ISAF)のドイツ軍兵士3人が犠牲となったことからドイツ軍が規模を縮小しており、住民らは不安を訴えている。
こうした状況について、政府軍側は、自爆攻撃の増加は、部隊としての攻撃能力が衰えたタリバンが個人による攻撃に頼らざるを得なくなった証拠だとしている。
一方で政府軍側も、タリバンとの戦闘でこれまでに市民数百人を巻き添えにしていると批判され、信頼の低下を招いている。
犠牲者は、タリバンの掃討作戦を続ける6万人規模のISAF兵士からも出ている。2007年には220人あまりのISAF兵士が、主に掃討作戦中に命を落とした。前年の犠牲者数は約190人だった。
一方、アフガニスタン警察に属する同国治安部隊の犠牲者数は700人にものぼる。
■戦闘員はパキスタンから越境
2007年に殺害された6000人のうちのほとんどは、タリバン支援のためにパキスタンから越境してきた武装勢力の戦闘員だ。パキスタンとアフガニスタン国境地帯はタリバン勢力の温床となっているため、パキスタン政府は国際社会から武装勢力掃討の努力を求められている。
国防省のMohammad Zahir Azimi報道官は、同軍の攻撃で5月にタリバンのムラー・ダドゥーラ(Mullah Dadullah)最高司令官が死亡していることから、報復としてタリバンが攻撃の手を強めているとみる。
一方、3日に同国を電撃訪問したロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官は、武力衝突や自爆攻撃の増加は、治安部隊が武装勢力への攻撃を強化した結果だとしている。
ゲーツ長官や北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organisation、NATO)のヤープ・デホープスヘッフェル(Jaap de Hoop Scheffer)事務総長は、アフガニスタンの治安維持を支援するNATO軍の兵力が不足しているとして、同盟国にさらなる支援を呼びかけている。
ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)アフガニスタン大統領は、同国の治安悪化の要因となっている反政府戦闘員らは、アルカイダなどの戦闘員をかくまっている国に潜伏していると述べ、暗にパキスタン政府を批判した。
■アフガニスタン政府にも問題
しかし、タリバンの母体となった神学生らが拠点としていた南部カンダハル(Kandahar)のある部族長は、問題はアフガニスタン政府が、タリバンの支配地域下にある人々を、タリバン勢力から守れていないことだと指摘する。
この部族長は「政府の力がこうした地域まで行き届かない以上、住民らはタリバン側につかざるを得ない」と語る。
2001年にイスラム原理主義勢力タリバン政権が崩壊して以来、数十億ドルもの援助金がアフガニスタンの復興活動に投入されてきた。しかし、人道援助団体からも41人がテロなどの犠牲になるなど、同国の復興は進展していない。
国連開発計画(UNDP)が11月に発表した「人間開発報告書」では、こうした国際社会の支援努力にも関わらず、アフガニスタンの「人間開発指数」は最下位から5番目だった。(c)AFP/Sardar Ahmad and Bronwen Roberts
紺色の車両がバスに突っ込み凄まじい爆発音が鳴り響き、巨大な閃光が拡がった。それが、旧支配勢力「タリバン(Taliban)」による自爆テロだと理解するのに数秒かかった。
シュケブさんが目撃したのは、5日に発生した政府軍のバスを狙ったタリバンの自爆攻撃だ。同テロで、少なくとも兵士6人、子ども4人を含む計13人が死亡している。
爆発で破壊され煙をあげる軍用バスの周囲には、手足が吹き飛んだバラバラ遺体が散乱し、「わたしの生涯で最も恐ろしい光景だった」と20代後半のシュケブさんは恐怖の様子を語った。
■戦闘やテロの犠牲者数が増大、自爆攻撃も前年の2倍
アフガニスタンの2007年の重要な出来事としては、同国最後の国王だったモハメド・ザヒル(Mohammed Zahir)元国王の逝去、世界の麻薬生産量の93%を占めるといわれる麻薬栽培の再増加、緊急な治安部隊強化などがあげられる。
しかし、最も2007年を象徴するのは治安状況の急激な悪化だ。2007年の戦闘やテロなどの犠牲者数は、米軍の攻撃により2001年に旧支配勢力「タリバン」が撤退して以来、最悪となった。
国連(UN)の調べによると、2007年前半の6か月だけで、77件の自爆攻撃が発生。これは、前年同期の2倍、2005年の同期からは26倍という多さだ。
後半に入ってからの自爆攻撃数は140件あまりと、状況はさらに悪化する。
特に11月に北部バグラン(Baghlan)州の製糖工場で発生した自爆攻撃は、視察に訪れた議員や歓迎式典に出席した子どもたちなど80人あまりが犠牲となり、アフガニスタン史上、最悪のテロ事件となった。また、同テロは、これまで南部を中心に攻撃活動を展開してきたタリバン武装勢力の勢力範囲が東部にまで拡大している事実を裏付けた。
北部でも、クンドゥズ(Kunduz)で前年に発生したテロで国際治安支援部隊(ISAF)のドイツ軍兵士3人が犠牲となったことからドイツ軍が規模を縮小しており、住民らは不安を訴えている。
こうした状況について、政府軍側は、自爆攻撃の増加は、部隊としての攻撃能力が衰えたタリバンが個人による攻撃に頼らざるを得なくなった証拠だとしている。
一方で政府軍側も、タリバンとの戦闘でこれまでに市民数百人を巻き添えにしていると批判され、信頼の低下を招いている。
犠牲者は、タリバンの掃討作戦を続ける6万人規模のISAF兵士からも出ている。2007年には220人あまりのISAF兵士が、主に掃討作戦中に命を落とした。前年の犠牲者数は約190人だった。
一方、アフガニスタン警察に属する同国治安部隊の犠牲者数は700人にものぼる。
■戦闘員はパキスタンから越境
2007年に殺害された6000人のうちのほとんどは、タリバン支援のためにパキスタンから越境してきた武装勢力の戦闘員だ。パキスタンとアフガニスタン国境地帯はタリバン勢力の温床となっているため、パキスタン政府は国際社会から武装勢力掃討の努力を求められている。
国防省のMohammad Zahir Azimi報道官は、同軍の攻撃で5月にタリバンのムラー・ダドゥーラ(Mullah Dadullah)最高司令官が死亡していることから、報復としてタリバンが攻撃の手を強めているとみる。
一方、3日に同国を電撃訪問したロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官は、武力衝突や自爆攻撃の増加は、治安部隊が武装勢力への攻撃を強化した結果だとしている。
ゲーツ長官や北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organisation、NATO)のヤープ・デホープスヘッフェル(Jaap de Hoop Scheffer)事務総長は、アフガニスタンの治安維持を支援するNATO軍の兵力が不足しているとして、同盟国にさらなる支援を呼びかけている。
ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)アフガニスタン大統領は、同国の治安悪化の要因となっている反政府戦闘員らは、アルカイダなどの戦闘員をかくまっている国に潜伏していると述べ、暗にパキスタン政府を批判した。
■アフガニスタン政府にも問題
しかし、タリバンの母体となった神学生らが拠点としていた南部カンダハル(Kandahar)のある部族長は、問題はアフガニスタン政府が、タリバンの支配地域下にある人々を、タリバン勢力から守れていないことだと指摘する。
この部族長は「政府の力がこうした地域まで行き届かない以上、住民らはタリバン側につかざるを得ない」と語る。
2001年にイスラム原理主義勢力タリバン政権が崩壊して以来、数十億ドルもの援助金がアフガニスタンの復興活動に投入されてきた。しかし、人道援助団体からも41人がテロなどの犠牲になるなど、同国の復興は進展していない。
国連開発計画(UNDP)が11月に発表した「人間開発報告書」では、こうした国際社会の支援努力にも関わらず、アフガニスタンの「人間開発指数」は最下位から5番目だった。(c)AFP/Sardar Ahmad and Bronwen Roberts