【11月20日 AFP】米国防総省は19日、パキスタン部族地域の治安部隊の訓練と装備供与を行う計画を明らかにした。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)とイスラム原理主義勢力タリバン(Taliban)の勢力増大に対抗する措置となる。

 国防総省のジェフ・モレル(Geoff Morrell)報道官によると、アフガニスタンと国境を接する部族地域に新拠点を設け、米陸軍部隊を使ってパキスタン辺境州防衛部隊(Pakistani Frontier Corps)の訓練に当たる。

 核保有国であるパキスタンが、ペルペズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領の下で政情不安に陥る中、米国ではイスラム武装勢力の台頭に対する懸念が高まっている。

 軍事訓練のために必要な米軍の人員は不明だが、増員されればパキスタン国内で米国の軍事的プレゼンスが拡大することになる。パキスタン国内の米軍関係者は現在、大使館の警備員も含めて約50人のみ。

 計画はまた、治安要員の地元採用を優先する方針への転換にもなる。これまで地元採用は、親タリバン的なパシュトゥン人からの徴用になるため信頼できないと見られることが多かった。

 モレル報道官は「パキスタンの特にこの地域では、地元から出た勢力と協力した方が、パキスタン軍と協力するよりも効果的だと考える。(パキスタン軍は)この地域では、パキスタン辺境州防衛部隊ほど尊敬の目で見られていない。パキスタン辺境州防衛部隊は地元の言葉が分かり、この地で育ち、部族長とつながりのある人たちで構成されている」と語った。

 モレル報道官によると、国防総省は実際には2007年度からパキスタン辺境州防衛部隊への資金投入を開始していた。8万人の部隊は8大隊に拡大され、米国のヘルメットとベストを支給されているという。

 2008年の計画には、さらに4大隊の追加と、国境沿いのパキスタン・アフガニスタン共同監視基地の設置、共同訓練所の設置が盛り込まれている。パキスタン辺境州防衛部隊への武器と弾薬はパキスタン軍が供給し、訓練との装備の供与は米軍が行う。

 5年間にわたる計画でかかるコストは不明だが、国防総省は今年度予算として9700万ドル(約107億円)を要求している。2007年の同部隊のための予算は5260万ドル(約58億円)だった。

 この計画について報じた19日の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、パキスタン辺境州防衛部隊拡大のための予算は数年間で約3億5000万ドル(約386億円)になるとしている。(c)AFP/Jim Mannion