イラク南部のシーア派2大勢力、一触即発状態
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【11月19日 AFP】イラク南部でイスラム教シーア派(Shiite)の2大勢力間の権力抗争が過熱している。英国軍からイラク政府へのバスラ(Basra)統治権委譲を前に、流血の事態に発展する懸念も浮上してきた。
首都バグダッド(Baghdad)南方180キロのディワニヤ(Diwaniyah)では、イラク治安部隊が17日、シーア派の強硬派指導者ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師派の民兵組織マフディ軍(al-Mahdi Army)に対する掃討作戦を開始したことから、緊張が高まった。
■サドル師派、イラク・イスラム最高評議会と政府のつながりを非難
イラク治安部隊の実権を握るのはイラク・イスラム最高評議会(Supreme Islamic Council of Iraq、SIIC)で、サドル師派との間で激しい抗争を展開しており、10月の両者による和平協定調印後も対立は続いている。
シーア派が大半を占めるディワニヤでは両勢力間で何か月も不満がくすぶっている。サドル師派はいかなる形の武力行使であれ「開戦理由」になり得ると警告している。
サドル師派側は、アブドルアジズ・ハキム(Abdel Aziz Hakim)師率いるSIICが、ディワニヤなどイラク各地で政府との太いパイプを利用して国家機関に浸透し、同派の政策によって牛耳ろうとしていると非難している。
SIICはこれに反論すると同時に、法の執行の必要性を引き合いに、マフディ軍に対する攻撃を正当化している。SIICでは、同派傘下の民兵組織バドル旅団(Badr Brigade)が警察組織の一部として執行部隊に組み込まれている点を強調している。
■マフディ軍掃討作戦
ディワニヤでは17日、装甲車の護衛付きで警官隊が出動し、マフディ軍に対する作戦を開始した。司令官は「無法者」の取り締まりと武器押収が目的だとしており、数日間にわたって展開される予定となっている。
市内には外出禁止令が出され、サドル師派の支配地域には警官が配備された。16日には市内から脱出しようとしたマフディ軍関係者2人が身柄を拘束された。
■原油の輸出拠点バスラを抱えるディワニア
サドル師派の議員は、サドル師派の支配地域を制圧するために、地元当局が米軍と政府の支援を招き入れていると非難する。同議員は「占領軍(米軍)と当局の間でたくらみがある」のだとし、ディワニヤの住民は、自分たちの代表ではないSIICによる統治を受け入れないだろうと語った。
ディワニヤでの緊張増幅は、シーア派が多数を占める国内の他地域にとっても不安要素となる。なかでも多数の油田があり、イラクにとって最重要な原油の輸出拠点であるバスラを抑えることは、両派にとって非常に大きな意味を持つ。
英国は9月にバスラの最後の基地から撤退し、12月半ばにバスラ地域をめぐる統治権限をイラクに完全委譲する準備を進めている。(c)AFP/Jacques Charmelot