【10月17日 AFP】クルド人武装勢力の掃討を目的に、トルコ政府がイラク北部に対する越境軍事行動を追求する中、イラク政府はトルコ側に対し17日、クルド人勢力に対処するための時間的猶予を求めた。

 トルコ政府はイラク北部への越境作戦を可能とする時限立法を議会に提出している。

 トルコを訪問したタリク・ハシミ(Tareq al-Hashemi)イラク副大統領は、同国指導者らとの会談後、「(トルコによる越境作戦の前に)イラク政府がテロリストによる越境活動を阻止する機会が与えられるべきだ。会談は満足がいくもので、現在の危機を克服する新たな手ごたえがあった」と語った。

 トルコのアナトリア(Anatolia)通信によると、16日の会談にはトルコ側はレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相、アブドラ・ギュル(Abdullah Gul)大統領、アリ・ババジャン(Ali Babacan)外相が出席した。

 イラク北部にはクルド人非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)の拠点がある。トルコ議会は政府に越境軍事行動を可能とさせる1年間の時限立法を17日中にも承認するとみられている。

 トルコをはじめ多くの国からテロリスト組織に指定されているPKKは、トルコ南東部でクルド人独立国家の建設を目指しており、1984年に武装闘争を開始した。

 トルコ政府は、国境を越えたイラク北部のクルド人自治区で、自治区の指導者たちからPKKが容認され、自由に活動していると非難している。また同地区内でPKK戦闘員らが武器や爆発物を調達し、トルコ側に再入国しているとも指摘している。

 イラクのハシミ副大統領は会談の中で、PKKに対処するための時間的猶予をイラク政府に与えるよう明確に要請した。同副大統領は「この問題に取り組むため、トルコ軍と協力するための時間がほしい。これは両国双方にとっての安全保障問題だ」とトルコ側を説得したと伝えられている。

 また「イラク政府が責任を果たせない場合には、トルコ政府が安全保障上の利益を守るために必要な措置を取ることはもっともだ」とも述べたという。

 アナトリア通信によると、イラク北部におけるPKKの活動に対してハシミ副大統領がトルコ政府の「怒りと失望」に十分理解を示した一方で、トルコ側からはイラク政府に対し迅速な対応が求められたと語った。
 
 トルコのエルドアン首相は、議会の承認がただちに軍事行動を意味することはないと発言している。(c)AFP