【10月12日 AFP】コンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官は11日、イスラエルがエルサレム近郊のパレスチナ自治領の土地の接収命令を出し、中東和平の障害となる恐れが広がっている問題について、10日に駐米大使に説明を求めたことを明らかにした。

 ライス長官はモスクワへ向けて移動中の機内で、「前日、駐米大使を呼んで状況の説明を求めた。回答を待っているところだ」
と述べた。

 イスラエル軍とパレスチナ自治政府高官は9日、東エルサレムとマーレ・アドミム(Maale Adumim)のユダヤ人入植地との間の4つの村にまたがる約110ヘクタールの土地について、軍が9月末に接収命令を出したことを明らかにした。AFPが入手した土地所有者への軍の命令書は、接収の理由を「軍事目的」とし、「テロ行為を阻止するため」と説明している。

 軍によると、現在東イスラエルとヨルダン川西岸のエリコ(Jericho)を結ぶ15.5キロの道路を建設しており、これに144ヘクタールの国有地と23ヘクタールの「適切な」民有地を当てる計画だという。一方、日刊紙ハーレツ(Haaretz)は、接収された土地は「パレスチナ人専用の新道の建設のほか、ユダヤ人入植地として開発し住宅3500棟や工業団地を建設する」と報じた。
 
 これに対しパレスチナ側は、接収された土地がマーレ・アドミムなど付近2か所の入植地に統合され、ヨルダン川西岸(West Bank)のパレスチナ自治領が分断されるとの懸念を示している。
 
 イスラエルはかつて、1967年以来同国が占領している東イスラエルとマーレ・アドミム入植地を結ぶ計画を立てたが、東イスラエルを将来のパレスチナ国家の首都としたいパレスチナ側が強く抗議。米国の圧力で、2005年に計画を凍結していた。

 11月に米メリーランド(Maryland)州アナポリス(Annapolis)で開催される予定の中東和平国際会議を前にしたイスラエル側の強硬策に、エジプト、ヨルダンといったアラブ諸国やフランスなどは直ちに非難を表明したが、米国はこれまで、ショーン・マコーマック(Sean McCormack)国務省報道官が「現状を確認したい」と述べるにとどまっていた。

 ライス長官は訪ロ後の14日にも、和平会議の根回しのために中東を訪問する。イスラエル政府の発表は不測の事態と言え、混乱は避けられないとみられる。5日間の中東滞在中、ライス長官はイスラエルとヨルダン川西岸のラマラ(Ramallah)、ヨルダン、エジプトを訪れ、イスラエルのエフド・オルメルト(Ehud Olmert)首相とパレスチナ自治区のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長との会談も予定されている。(c)AFP