【8月29日 AFP】イラクのシーア(Shiite)派聖地カルバラ(Karbala)で28日、同派の聖人イマーム・マフディ(Mahdi)生誕800年の祝祭中に発生した警官隊と武装グループの銃撃戦による死者は、52人に達した。これを受け、ヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相は29日、同市に外出禁止令を発令した。

 マリキ首相は、武装グループはサダム・フセイン(Saddam Hussein)独裁政権の残存勢力だと非難、イラク軍治安部隊が市内を制圧下に置いたとの声明を発表した。

■無期限の外出禁止令

 イラク国営テレビは現地を訪問したマリキ首相の談話として、無期限の外出禁止令は人と車を対象とし、現地時間午前11時に発効されると伝えた。

 カルバラ駐在のAFP特派員によると、武力衝突はシーア派の巡礼者があふれた道路で発生し、夜間を通じて続いたが、29日早朝に沈静化したという。夜のうちに建物数棟が焼失したほか、救急車や警察の検問所が破壊されたという。

 巡礼地である聖人イマーム・フセイン(Imam Hussein)とイマーム・アッバス(Imam Abbas)の廟がある旧市街の広場では、シーア派の民兵が野営していたのが目撃されている。

 悪化する一方の国内情勢に無策であると内外から強い批判を浴びているマリキ首相は、武装グループはフセイン政権の残存勢力が結成した犯罪者集団だと非難の矛先を向け、「今回のテロ行為により、多くの巡礼者が死亡または負傷した上、公共財産も破壊された。支援部隊を派遣し、軍、警察、即応部隊も配備したため、市内は制圧された」と述べた。

■銃撃戦で52人死亡

 医療当局によると、少なくとも52人が死亡、約300人が負傷し、うち少なくとも60人が近隣の都市、ナジャフ(Najaf)の病院に搬送され治療を受けているという。

 カルバラの警察署長によると、何者かが警察へ向けた発砲を受けて警察が応戦、それをきっかけに大規模な衝突に発展した。イマーム・フセイン廟付近には迫撃砲も着弾したという。

■カルバラはマフディ軍の拠点

 武装グループの詳細については明らかにされなかったが、カルバラは反米主義のシーア派強硬派指導者、ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師率いる民兵組織マフディ軍(Mahdi Army)の拠点として知られている。

 一方、警察組織はシーア派政党、イラク・イスラム最高評議会(Supreme Islamic Council of IraqSIIC)寄りとされる。

 マフディ軍とSIIC派は、シーア派が多数を占めるイラク南部の都市などの覇権をめぐり衝突しており、シーア派同士の勢力抗争の中核となって、反政府勢力と米軍主導部隊の衝突に加え、イラクの政情を不安定にしている。

 同様の武力衝突は27日遅くにも発生し、5人が死亡している。(c)AFP/Abdelamir Hanun