【7月16日 AFP】パキスタン北西部、アフガニスタン国境周辺にある部族地域の親タリバン(Taliban)派武装勢力らが、パキスタン政府との和平協定を破棄したため、衝突の拡大を恐れた数千人の住民が16日、地域からの脱出を開始した。

 部族地域では前週末、2か所で軍の車列2隊、さらに警察署を狙った計3件の自爆攻撃が発生しており、70人以上の死者が出た。一連の自爆攻撃を受け、治安部隊が厳戒態勢に入っている。相次いだ襲撃は首都イスラマバード(Islamabad)の通称「赤いモスク(Red Mosque)」に対するパキスタン政府の武力制圧への報復とみられている。

 国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)や地元のイスラム教強硬派らは前週、親タリバン勢力である「赤いモスク」の制圧に対する報復として、ペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領率いるパキスタン政府に対する「ジハード(聖戦)」を呼びかけた。「赤いモスク」立てこもり事件では政府軍の兵士11人、モスク内にいた75人が死亡した。

 北西辺境州(North West Frontier ProvinceNWFP)の州都ペシャワール(Peshawar)では、州当局と聖職者や部族の長老たちが危機的事態を打開するための話し合いを行ったが、これとほぼ同時に住民らの集団脱出が始まった。

 やはりアフガニスタンと隣接する北ワジリスタン(North Waziristan)地区の都市ミランシャー(Miranshah)でも、地元の武装勢力が2006年にムシャラフ政権と結んだ和平協定を破棄したため、数千人が安全な地域へと脱出を開始した。住民によると、人々が脱出した後の市場は閑散とし、また地元ラジオ局ではアナウンサーが他の当局高官ら同様、緊張の高まる地区から逃げ出してしまったため、放送が停止した。

 2006年9月の和平協定では、武装勢力側がアフガニスタン側への越境攻撃の停止を約束した引き換えに、パキスタン政府側は国境の山岳地帯に隠れる外国人戦闘員などの掃討作戦を中止するとし、パキスタン政府は米国、アフガニスタンの両政府から批判されていた。

 しかし、親タリバン派のタリバン・シューラ(タリバン評議会、Taliban Shura)は15日、パキスタン軍の配備強化や検問所の増設に抗議を表明し、和平協定を破棄。イスラマバードの中央政府へのあらゆる協力を停止するよう部族の戦闘員らに呼び掛けた。(c)AFP/Frank Zeller