【6月1日 AFP】元米国防総省高官のマーク・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)氏がシンガポールで1日、第6回アジア安全保障会議の開催を前に、アルカイダ(Al-Qaeda)などのテロリスト集団が核爆弾製造に必要な量の濃縮ウランを入手する可能性は極めて低いとの見解を示した。

■闇市場の濃縮ウラン全量でも核爆弾製造は不可能
 
 兵器拡散防止を専門とするフィッツパトリック氏は、現在、アジア安全保障会議の主催する国際戦略研究所(International Institute for Strategic StudiesIISS)の上級研究員を務めている。

 同氏によると、各報告を総合した結果、「世界中の核の闇市場に出回るプルトニウムや濃縮ウランをすべて集めたとしても、その総量は核兵器製造に必要な量に満たない」という。

 これまでに世界各地で押収された高濃縮ウランの総量は8キロになるが、同氏によると、これは分裂型核爆弾製造に必要な量の3分の1の量にすぎない。

■「核の闇市場」が根絶されたわけではないと警告も

 またフィッツパトリック氏は、「核開発の父」として知られるパキスタンのアブドル・カディル・カーン(Abdul Qadeer Khan)博士を中心とする世界規模の核の闇市場ネットワークが3年前に崩壊して以来、核の闇市場への監視が厳しくなっており、「今後、テロリスト集団が核物質を入手することは、一層難しくなる」と予測する。

 一方で、これによって「核の闇市場」が根絶されたわけではないとも警告する。「核兵器製造を目的とした核開発技術の需要は今でも高く、常に監視が必要だ。特にイランは核物質調達の組織をすでに構築しており、その規模はカーン博士のネットワークに匹敵するものだ」

 「(テロリストが核兵器製造に成功する)可能性は極めて低い」が、「危険の度合いは非常に大きく、よって各国政府は最大限の努力で防止策に務める必要がある」とも述べている。

 2日の安全保障会議には、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官のほか、中国、日本、韓国、インドなどから政府高官が出席する。会議開催を前にホスト国のシンガポールでは、会場となるホテル周辺に厳重な警戒態勢を敷いている。(c)AFP