【5月25日 AFP】 北朝鮮が25日朝、短距離ミサイル数発を日本海へ向けて発射した。韓国国家情報院(NIS)がこの事実を確認したと発表した。

 NIS広報官は「今回の北朝鮮によるミサイル発射は、毎年実施されている同国の通常の軍事訓練の一部とみられる」とAFPの取材に答えた。

 今回の実験は、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議が行き詰まる中、昨年7月の以来、初めてのミサイル発射となる。

■日本政府の対応は

 共同通信、時事通信は、日本政府筋の情報として、「発射されたのは25日早朝で、複数のミサイルだった」という。NHKでは、発射されたミサイルの射程距離について「日本政府が調査中だが、危険はない」と報じている。

 また、ある政府高官はNHKに対して「テポドン2やノドン(Nodong)などの弾道ミサイルではない。より射程距離の短い、地対艦ミサイルとみられる。日本の安全保障に直ちに影響を与えるものではない」と答えた。昨年7月の発射よりも深刻性は低く、2005年の短距離ミサイル実験と同程度のものと考えられるという。

 時事通信では、日本政府が非常事態を宣言することはないだろうとする政府高官のコメントを引用した。

 日本政府は、日本が北朝鮮の標的となる可能性が最も高いとみなしており、今年3月に首都圏に初のミサイル防衛システムを配備した。両国の関係は歴史問題や北朝鮮による日本人拉致問題などで緊張が続いており、昨年のミサイル実験および核実験の後には、日本は北朝鮮に対し全面的な経済制裁を課した。

■米国国防総省も「事実を調査中」と発表

 米国国防総省も、ミサイル発射について事実を調査中だと発表した。同省広報担当官は「何かが発射されたが、それが正確に何かは分かっていない。何が発射されたかを確認するために調査中だ」とAFPに語った。

 北朝鮮は4月に行った朝鮮人民軍の記念パレードで、米国のグアム(Guam)島に届く射程距離を持つとみられる新型長距離ミサイル「ムスダン(Musudan)」を公開した。
 
 米ミサイル防衛庁のパトリシア・サンダース(Patricia Sanders)氏は前週、北朝鮮側はミサイルの射程距離と精度を向上させていると指摘していた。 

■6か国協議がこう着状態のなかで

 北朝鮮が初めてミサイル実験で世界を震撼させたのは1998年の「テポドン1(Taepodong-1)」の発射で、同ミサイルは日本の本州を越え、太平洋に落下した。

 さらに昨年は、7月に複数回の弾道ミサイル発射実験と、10月には初の核実験を行い、国際社会の痛烈な批判を浴びた。米国の独立記念日にあたる7月5日のミサイル発射では、短距離および中距離ミサイル6発、さらに米国西海岸に到達できる射程距離を持つ長距離ミサイル「テポドン2(Taepodong-2)」1発を連射した。ミサイルは危害を与えることなく、数分以内にすべて日本海の海中に落下した。

 昨年10月の北朝鮮による初の地下核実験後は、最も緊密な関係にある同盟国・中国も非難を発表、国連(UN)の制裁決議を含む厳しい国際批判を浴びた。

 その後、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議が復活され、数か月の協議を経て、北朝鮮は今年2月、参加国によるエネルギー支援と引き換えに、核施設を停止・封鎖することを受け入れる画期的な合意に至った。

 しかし、マカオの銀行口座に凍結されていた北朝鮮関連資金の凍結解除と返還が進まず、北朝鮮側は4月に設定された初期段階措置の実施期限を満たさなかったため、非核化プロセスは暗礁に乗り上げている。(c)AFP

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