【ワシントンD.C./米国 19日 AFP】米国高官は19日、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)がパキスタン国内に、欧米でのテロ活動を目的とした戦闘員の訓練基地を設置している可能性があると語った。

 この高官が匿名を条件としてAFPに語ったところによると、訓練基地はアフガニスタン国境山岳地帯の半自治地域に2006年に設置されたが、米情報機関はこの動きを察知していたという。

 基地は小規模なもので、アフガニスタン内に見られるような巨大な軍事キャンプとは異なるという。10人から20人単位で、主として欧州諸国でのテロ攻撃の訓練が行われているものとみられる。

 これは、アルカイダがその役割を、世界各地に拡散したイスラム教過激派の「ジハード(聖戦)」運動を鼓舞するという精神的なものから、国際的な戦闘能力を身につける実戦的なものへと転換させたことを意味するものと見られている。

 同高官によると、米国の現在の懸念は、英国のパスポートを所持する英国籍のイスラム教徒らが、欧州とパキスタン間を自由に行き来し、アルカイダ戦闘員の募集活動を行っていることだという。

 米情報機関による最新レポートによると、ジョン・ネグロポンテ(John Negroponte)米国務副長官は1月11日の米議会で、アルカイダの中枢組織は引き続き米国などへのテロ攻撃の策略を練っていると警告、「アルカイダ幹部らは、パキスタン内の安全な『隠れ家』から世界各地に向けて影響力を発している。現在も中東、北アフリカ、欧州などのアルカイダ関連組織と関係を保ち活発に連絡をとっている」と述べた。

 加えて、アルカイダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ(Ayman Al-Zawahiri)容疑者が1月下旬、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領のイラク新政策発表に合わせて発表した挑発的な声明も、同組織が戦闘員の組織化、命令系統、管理体制の再構築を図り戦闘体制の整備を進めていることを示唆する一例ととらえられている。

 前述の米高官も、同声明について「アルカイダ式の戦闘員への命令、管理方法」と見ている。「ザワヒリ容疑者はビデオ声明を通じて、戦闘員と意思伝達を図っているのだ」。

 パキスタン国内にアルカイダ訓練基地が存在することを最初に報じたニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、「訓練基地」はアルカイダと連携するアラブ諸国、パキスタン、アフガニスタンの武装勢力間の緩やかな命令系統の下で運営されているという。

 一方、Mahmud Ali Durraniパキスタン駐米大使は、「訓練基地」は深刻な問題ではないとの見解を示した。

 同大使はCNNに対し「(パキスタン領土内に)疑わしい場所が存在する可能性はあるだろう。その場合は、我々が基地を探し出し排除する。これまでも、アルカイダに対してはそのように対処してきた」と語った。また、アルカイダが組織の再構築や拠点の増加を図り組織を再活性化させているとの見方について、「不正確な情報」との認識を示した。

 写真は北ワジリスタン(North Waziristan)州で17日、国境山岳地帯のAlwara Mandeiで警備にあたるパキスタン軍兵士。(c)AFP/Aamir QURESH