【12月31日 AFP】フィギュアスケート世界女王の浅田真央(Mao Asada)は、誰にもまねできないジャンプでライバル金妍児(Yu-Na Kim、キム・ヨナ)の芸術性を圧倒し、「最高の笑顔」で五輪前のシーズン(2008-09)を有終の美で飾ることを見据えている。

 共に18歳で身長164センチの両選手の熱いライバル関係は、12月のフィギュアスケートGPシリーズ・ファイナル(Figure Skating Grand Prix Series Final 2008-09)で浅田が大会2連覇中の金妍児からタイトルを奪い返して新年休暇を迎えた。

 両選手は、2010年バンクーバー冬季五輪で同種目の会場となるパシフィック・コロシアム(Pacific Coliseum)で2009年2月2日から8日まで開催される四大陸選手権2009(ISU Four Continents Figure Skating Championships 2009)で再び火花を散らすことになる。

 そして、年齢制限のため2006年のトリノ五輪に出場できなかった両選手は、3月下旬にはバンクーバー五輪での金メダル争いの行方を占う世界フィギュアスケート選手権(ISU World Figure Skating Championships 2009以下、世界選手権)に出場する。

 2008-09シーズンからタチアナ・タラソワ(Tatiana Tarasova)コーチの指導を受けている浅田は、難易度の高いプログラムでジャンプのミスがありながらも大会3連覇を果たした全日本選手権の後に「(世界選手権では)ミスをなくして2連覇したい」と語っている。

 金妍児のパーソナルベストが197.20点であるのに対して、浅田は国際スケート連盟(International Skating UnionISU)のジャッジシステムの下、女子の歴代最高得点となる199.52点を記録している。

 GPシリーズ・ファイナルのフリースケーティング(以下、FS)で浅田は、国際大会において女子では初めて1つのプログラムでトリプルアクセルを2回成功させており、この3回点半ジャンプは女子選手ではほんの一握りの選手しか成功していない。

 対照的に金妍児は芸術的な表現力をより重視している。

 金妍児は28日、ブライアン・オーサー(Brian Orser)コーチの下でトレーニングを再開するためトロント(Toronto)に発つ前に韓国の日刊紙、中央日報(JoongAng Ilbo)に対し「ミスすることなくプログラムを美しくまとめられるよう努力し、高い得点を記録したい。2010年の冬季五輪のことを気に掛けなければならないのかもしれないが、十分な準備ができれば対応できると思う」と語っている。

 2008年の世界選手権では臀部(でんぶ)の負傷の影響もあり、浅田とイタリアのカロリーナ・コストナー(Carolina Kostner)に次ぐ3位に終わっている金妍児にとって、ソウル(Seoul)郊外の高陽(Goyang)で開催されたGPシリーズ・ファイナルは名誉を回復するチャンスだった。

 母国での大声援の前で金妍児は、FSでは3回転ルッツが1回転に終わり、また3回転サルコーで転倒し、ショートプログラム(SP)でのリードを守りきれなかった。同大会で合計186.35点だった金妍児は、188.55点を記録した浅田に次ぐ2位に終わった。それでも金妍児はスケーティング技術、要素のつなぎ、振り付け、曲の解釈で浅田を上回っている。

 韓国では「国民の妹」と呼ばれている金妍児は、同大会後に「精神的な負担」に負けたと認めている。

 1989年にアジア人として初めて世界選手権を制した伊藤みどり(Midori Ito)さんは「金妍児には最高のスピードとドライブがある。彼女はダイナミック」と金妍児を評している。

 伊藤さんは1988年に女性選手として国際大会で初めてトリプルアクセルを成功させており、1992年のアルベールビル五輪ではジャンプを2度失敗したが銀メダルを獲得した。

 浅田について伊藤さんは「(トリプルアクセル)2回は男子選手でも難しい。でも真央はそれをやってのけた。彼女には技術がある。彼女に必要なのはけがを避けること」と語っている。(c)AFP/Shigemi Sato