【6月26日 AFP】ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2013)に出場している女子テニスのクルム伊達公子(Kimiko Date-Krumm)が、レベルの低下が顕著な日本女子テニス界に一石を投じた。

 今回のウィンブルドン本戦に最年長選手として出場している42歳のクルム伊達は、25日に行われた1回戦で18歳のカリナ・ウィットホーフト(Carina Witthoeft、ドイツ)をわずか44分で退け、6-0、6-2のストレート勝ちを収めた。

 お茶を愛飲していることが自身の選手生命を引き延ばしていると語るクルム伊達は、1996年大会で準決勝進出を果たした自身の成功例を念頭に置き、日本の選手が同様の成績を残すことがもっと当たり前になるべきとの見解を示した。

■若い選手には「戦う気持ちが必要」

 今大会にはクルム伊達を含めると、わずか3人の日本人女子選手しか出場しておらず、世界ランク94位の土居美咲(Misaki Doi)はすでにスペインのシルビア・ソレル・エスピノサ(Silvia Soler-Espinosa)に敗れて初戦敗退を喫している。

 また、同50位の森田あゆみ(Ayumi Morita)はマリナ・エラコビッチ(Marina Erakovic)と対戦したが、同じく土をつけられ1回戦で姿を消した。

「森田は世界ランク50位内に入っている。22歳の土居はトップ100位内にいる。でも今の日本にトップ100圏内に入ってくるような若い選手は少ない」とクルム伊達は語る。

「なぜかはわからないし、すごく難しい問題ではある。1990年代にはトップ100位内に10人の日本人選手がいたことを考えると、すごく残念に思う」

「若い日本人選手にはもっと戦う気持ちが必要。私たちは背が高くないから、普通に戦ってたら勝てるチャンスなんてない。欧米選手に比べて体格も小さいので、特別な何かがなくては海外の選手相手に勝機はない」

「それに若い選手はもっと心をオープンにするべきだし、トップ100位内に、さらにはトップ50位内に入る戦い方を覚える方法を身につけなければいけない」

■挑戦を楽しむ情熱的なクルム伊達

 四大大会(グランドスラム)で通算103試合に出場し、ウィンブルドン出場通算12大会目を迎えたクルム伊達は、1996年大会で4強入りを果たす快進撃を見せたが、同年に突然の引退宣言をした。

 しかし、夫であるドイツ人レーシングドライバーのミハエル・クルム(Michael Krumm)に促されて2008年に現役復帰。2009年の韓国オープン(Hansol Korea Open 2009)では、38歳でWTA史上2番目の年長選手として大会タイトルを獲得し、40歳の時には世界ランクトップ10位内の選手を破ったWTA史上最年長選手となるという2つの偉業を成し遂げた。

 そんなクルム伊達も、「25歳でテニスを辞めたときは、恋しくなるとは思ってなかった」と振り返る。

「若い頃は常にトップ10を目指していて、プレッシャーを感じていた。あまりテニスを楽しめていなかった」

「でもテレビ解説者として何年も現場に足を運ぶうちに、コートの外から見ていてテニスというスポーツの美しさに気付いた。それで徐々に気持ちが変化していった」

「現役復帰してからはすごく楽しんでいる。たとえ負けたとしてもね。私には溢れるほどの情熱がある。私の年齢では簡単なことではないけれども、その挑戦が好き」

■現役としてプレーする元気の源は「お茶」

 クルム伊達は、体力を消耗し切ってしまわないように練習スケジュールを慎重に組み立て、また中国茶をよく飲んでいると話す。

「自分の体には気を使ってる。当然ながら何よりも難しいのは体力を回復させること。たくさんの練習は必要だけど、やりすぎると疲れてしまう」

「私は中国茶が好きで、たまに日本茶も飲むけど、とにかく量をたくさん飲む。常にポットを持ち運んでいて、今回も持って来ている」

 また、多くの選手が力任せに勝負を挑んで、相手を圧倒することに専念する中で、高い経験地を持つことは精神面においても試合で有利に働くという。

「私の世代に比べると、今の選手にはスピードがあって、パワーもある。ただ、テニスは若い選手に限らず、パワーだけではダメだし、スピードだけでもダメ。テニスというのは精神力と経験が求められる。だからこそトップレベルにいけるのは、もはや若い選手だけではない」

(c)AFP/Steven GRIFFITHS