【3月28日 AFP】ドーピング検査でモルヒネが検出されたとして、大会優勝を取り消されたニュージーランドのトライアスロン選手が、モルヒネ検出は「ケシの実入りのパン」を食べたためだったと主張し、スポーツ法廷で認められた。

 グラハム・オグレディ(Graham O'Grady)選手(28)は1月、同国タウランガ(Tauranga)で行われた大会で優勝した。だが、ドーピング検査で陽性判定が出てタイトルをはく奪され、同国のスポーツ法廷に異議申し立てを行っていた。

■ケシの実入りパンが体内で代謝

 オグレディ氏は、世界のドーピング基準よりもわずかに多いモルヒネが検出された検査結果を認めた上で、モルヒネの摂取が意図的なものではなく、また、身体能力を向上させてもいなかったと反論した。

 オグレディ選手は、大会前にグルテンの含まれていないケシの実入りのパンを食べたところ、体内でモルヒネに代謝されたと主張。ケシはモルヒネなどのアヘン剤の原料だ。

 科学的な証拠の提示を受け、スポーツ法廷は、オグレディ選手から検出されたモルヒネがケシの実入りのパンに由来するものであることを認め、同選手の出場停止措置を解除すべきとの判断を下した。

 スポーツ法廷は24日に発表した判断で、「証拠に基づく信頼のある説明は他になかった」との見解を表明。ケシの実入りのパンを食べることでモルヒネが体内に入ることを、オグレディ選手が知っていたとする考えは合理的ではないと述べた。

 スポーツ法廷はこの事例を「極めてまれ」な出来事であると表現した。

■出場停止で多くの大会出場機会失う

 オグレディ選手の出場停止は解除されたものの、タウランガの大会でのドーピング検査が陽性で、タイトルをはく奪されたことは変更されないという。

 判断を受けてオグレディ氏は、陽性判定のせいで多くの主要大会に出場することができなかったと述べ、「心が張り裂けそうで、屈辱的な」経験だったと語った。

「パン数切れを食べた代償としては高くついた。わたしの身に起きたことが、ニュージーランドの他のアスリートたちに注意を喚起してくれたらと望む」と、オグレディ選手は語った。(c)AFP